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Legend_x_Heros  作者: 泥多忙
プロローグ
1/2

プロローグ01 独白

 2017年、地球は今までに体験したことのない未曾有の災害に悩まされていた。


 ー消失現象ー


 文字どおり無機物や有機物が突如として崩壊していき、やがては消滅してしまう現象のことである。そしてそれは現在、世界中の至るところで頻発しており、人々の生活や平和を脅かしていた。



 幸いにもこの問題に対しては各国の研究者たちの懸命な尽力があり、なんとか解決策が見つかったことによって対処が可能となった。消失現象を根幹から解決することは叶わなかったが、後出し対応とはいえなんとかすることが出来るようになり、人々は以前の生活に戻っていったのである。



 しかし、平穏が取り戻されていく中で人々は自らに迫る脅威に気づかなかった。




 ー忍び寄る混沌の気配にー

世界を破滅に導こうとする百鬼夜行の兵団


 ー混沌の中に蠢く者の存在にー

世界の破滅を回避しようと足掻く秘密組織




 そしてそれが後々、世界を揺るがす壮大な戦いに繋がることになるなど、誰も知る由がなかった。




2017年日本、物語はこの大地から始まる。






 夢を見た。


 数々の出会いと別れ、幾多の戦い、数多の冒険。


 記憶が光の束になって流れてゆく、幾千幾万の記憶の光が連なり、別れては一つの頂を目指して駆け抜けていった。


 目を閉じるとそこには、かつての在りし日の光景が次々に浮かび上がっていく。


 ここで過ごしたあの日常は、かけがえのないものだったと今になって実感する。

 辛く苦しい時があった、重圧に押し潰されそうな時もあった。しかし、その度に立ち上がっては支えてくれる仲間がいた。奮い立たせてくれる友がいた。


 温かく、心を照らす力強い繋がりが確かにそこにはあった。


 そう、あったのだ。確かにそこには、その繋がりが……あった筈だった。



 目の前には惨憺たる光景が広がっていた。


 艦内に鳴り響く非常警報のサイレン、避難を勧告する機械的なアナウンス、血溜まり、死体、炎、それらはもうどこにもあの日常は存在しないのだと、無くなってしまったのだという現実を実感させるには充分すぎた。


 仲間だった肉塊があちらこちらに転がっている、中にはもはや原型を留めないほどに損壊が激しいものや、恐怖に耐えかねてか自らの命を断ち切ったであろう者の死体も散乱している。艦内に生存者は恐らく誰もいないのだろう、いや艦内のみならず外の世界も恐らくは……



 外へと飛び出す、やはり外も艦内と何も変わらない。街は炎に包まれ、人々の悲鳴がある種の聖歌のように鳴り響いている。それは邪教を信奉する狂信者達の讃美歌であり、偉大なる主神に捧げる供物なのだろうか。もはや人と呼べるようなモノは存在せず、この世のものではない存在が全てを破壊しては食い散らかしていた。






 外に出てからどれくらいの時間が経っただろうか、ひとたび意識を手放しては再起動を繰り返して幾千幾万の死骸を積み上げ続けた。



 血に染まり、汚濁に塗れ、それでも尚立ち上がり続けた。

 大切なものを失い、貫く志さえ打ち砕かれ、己の存在を否定し、守りたかったものを壊しながら、それでも…




 しかし、絶望は目の前を塞ぎ、全ての終わりを迎える。

 目の前に広がるは闇黒の穴、これをなんと言えば良いのか、地獄の穴とでも言うのだろうか。口元が緩み、自然と笑みがこぼれた。一つの疑問が、一つの核心へと変わったのだ。




 これは夢ではなく走馬灯なのだと。

 自身の記憶を辿る映像の再現であると。ならばこそ、この地獄はどこまでも続くのだろう、次に目を覚ました時にはどんな地獄が待っているのか。俺はその地獄でどのような罪状を突きつけられ、そしてどのようにして裁かれるのだろうか。




「ーーー」




 名前を呼ぶ。しかし、ここにはもう誰もいない。

 俺が汚した、俺が壊した、俺が殺した、その名を口にする資格など俺にはもう無いのだろう。もうここには誰もいないのだから。



 そして、かつての在りし日の思い出を瞼に焼き付け、俺は意識を闇へと手放した。






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