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「帰ったぞぉぉい」
俺はヤル気の感じられない低い声で重厚なドアを開けて部屋に入った。
さすがに勇者との闘いは疲れた……身体から漂っているオーラが薄い気がする。
「ドフューゥ……やっぱりこの玉座は座り心地がすんばらしぃーぃ」
ちなみに魔王は元々クールなのだが、勇者との闘いの後は調子に乗って言葉遣いなどが変になる。恐らく趣味のネットサーフィンが原因だろう。
ここは魔王が支配するデスパイアという世界。元々は魔王が支配してた訳ではなかったのだが、ネットで知り合った女性にオファーを受けて魔王になった。
魔王になった……というが、簡単になれた訳ではない。魔物を倒して倒して倒しまくり、魔物を全て従えることで魔王になったのだ。
つまり「魔物倒して経験値貯めりゃあそのうち魔王に進化すんじゃね?ワロス」てことだ。
魔王になりたい者は教訓にすると良いぞ。
「ふぅ……さてさてハーレムタイムじゃぁぁぁ!」
パンパン!と両手を叩くと待ってました、とばかりに部屋のあちこちのドアが勢い良く開かれる。
『「「「魔王さまぁーーーっ!」」」 』
そう、これこそが俺様の築きし、最強の魔王ハーレムっ!
ここまでの道は長かった……
だって俺の周りってガチムチドラゴンとかゴリゴリデビルとかばっかなんだもん!
現れた女性達はこの世界でも屈指の美貌を持つ者ばかり。
さぁ皆の衆!宴じゃぁぁぁ!
ぁ?
何故か美女達の動きがものすごーーく鈍い。今話題のスーパスローモーション?
ふざんけなぁ!俺の……俺のハーレム!もう少しだ!待ってろおぉい!
玉座から立ち上がり彼女たちに近いていく……
『そろそろ時間よ。いきましょ、レン』
聞き覚えのある声と共に、目の前の空間がパックリとまん丸に開きやがった。
「嘘ぉおおぉおんんん!!?」
魔王、滅亡のお知らせ。
ちょっと待てぇい!!
誰じゃ滅亡とか言ったのは!
ワシはまだ生きとるぞっ!
とりあえず瞑っていた目を開けてみるか。
ぷーかぷーかと夢見心地で宇宙に浮かんどる。
マジすか!!
魔王、再び滅亡のお知らせ。