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ーー暗い闇が何処までも続いている。以前とは全然違う、果てしない闇の中を浮遊し続けている。この永遠とも感じられる闇に包まれているせいか、時間感覚も、今自分達がどういう状況に置かれているかも曖昧になってくる。
しかし、でも確かに感じるものがある。そのお陰で俺は、ちゃんと生きてる、ここに存在するってことを信じることができる。
だからこの手で掴んでいる手を離すわけにはいかない。
ギュッと、しっかりと手を握り直す。
「……レン……君……」
「大丈夫だ。ちゃんと帰れるさ、みんなで……」
酷い眠気が身体を襲う。この異空間に入ってからずっとだ。さっきまでの異空間とは異空魔力の質が段違いで、それの影響で身体に異変が起きているのだと思う。
俺は無理矢理に魔力を大量錬成し、全身をコーティング。さらに右手で繋がっているエレナも防護魔法を施して幾らかは守ることができている。左手で握っているミイ、そしてその向こう側でミイと手を繋いでいる柊菜も何とか防護魔法の範囲にいるため、異空魔力には侵されていないようだ。
「……やっべ……めっちゃ眠……い……」
だが、俺は意識が朦朧とし始めていた。魔力の消費量が半端じゃないし、そして何時間、何十時間こうして暗闇を浮遊し続けているか分からない。
「……ダメだ……!」
何とか意識を保とうとするが、身体が拒否反応を起こしている。このままじゃ防護魔法が解けて俺以外は全員異空魔力に身体を破壊されてしまう。
「……く……ぐぅ……はっれ…ぐぅ…」
いかん!今寝てた!
えぇい!こうなったら!
少しの間だけエレナとの手を外し、俺は水属性魔法で粘着性をマックスまで高めたボールを作り、手探りで柊菜とミイの手をくっつけ、そして俺とミイ、エレナとの手をくっつける。そして最後にありったけの魔力で防護魔法を発動し、分厚い加護を全員に施した。多分3日は持つぞ。
「……これ……で……大丈夫……ぐぅ……」
眠気に耐えられなくなった俺は眠りについてしまった。
ーー
しかし、レンは単純なミスを犯していた。
防護魔法は、というよりも魔法は睡眠時は解除される、またはされやすい、ということを。
「……大…丈夫……だよ。……みんな……」
エレナがそう呟いて魔力を錬成する。
「……『異空』」
ボンヤリとした光が4人を包み込む。
そして、エレナはグッタリと眠りについたのだった。