20
帰り道、エレナとミイは終始黙ったままだった。
それとは対照的に俺は女子の生徒にナンパを仕掛けて見たのだが、俺の悪い噂が流れてしまっていたのか、全て撃沈という結果におわっていた。
「……なー」
「……ん?どうしたの?」
俺はシーンとした状況に我慢ができなくってエレナに話しかけてみた。
「何カップ?」
「へ?」
「……」
俺の問いに目を丸くさせるエレナ。
真剣に聞いてるんだが。
「……いや、やっぱいいや。
何で学校の奴らはお前らのこと避けてんだ?」
嫌でも気づいた。
帰るとき、誰も2人に話しかけることもなかったし、まず、皆の2人を見る目が何か違った。
それにクラスでもミイは他の人と話してる姿は見られなかった。
「……!あんた……!」
「それはね、私のせいなんだ」
ミイは俺に掴みかかろうしたが、エレナが割り込むことで手を引っ込めた。
てかミイってロリっ子なのに暴力的すぎじゃね?
「そのことを話すには、第十学校と私の母の話をしないとね……」
そう言うとエレナは自分達が第十高等学校で嫌われている理由を話し始めた。
第十高等学校。それはこの世界に10つある高等学校の一つで、最近に作られた学校だ。
この世界……地球には大陸が一つしか存在しない。俺はこのことを教科書で読んで驚愕した。
今いるこのシードという世界以外は全て海で構成されているのだ。
その大陸には10つしか高等学校がなく、第一高等学校から順に魔法や超能力の強さで入学できる高等学校を振り分けられる。
第十高等学校はその底辺学校なのだ。
簡単にいえば、この世界での落ちこぼれ達が通う学校、それが第十高等学校ということ。
そして、エレナの母についてだ。
彼女の母はこの世界の権威ある科学者の1人で、統治機関とも繋がりのあるスーパーママというやつだ。
が、夫……つまりエレナの父とはあまり仲が良くなかった。
それで母はエレナのために彼女の能力を伏せ、あのシードでも人の少ない場所に家を置いたのだ。
母は仕事が忙しすぎて全く家へ帰ることができない。だから彼女はずっと、子供の頃からもずっと1人で生活していた。ということだ。
「泣ける……」
俺はグシグシと目を服でこするとプリンの身体に鼻水をつけた。
案の定引っかかれてしまった。
「それで、私は魔法が弱いってことで第十高等学校に入れられたんだけど、使えることがばれちゃってね。それからは皆、裏切り者扱いしかしないんだよ」
そう、第十高等学校は弱者のみが集められた学校。そこに普通に魔法が使える秀才がくれば恨みもするだろう。
ミイも魔法が使えるようになったため、同じ様な扱いを受けている。
あ、俺もらしい。豚マスクってだけで。
ちなみに俺が騒ぎもなく、高校に編入できたのもエレナの母のおかげだそうだ。
「……ったくプリンちゃんおいで!」
「ニャァァン…!」
ミイは鼻水がついたプリンを連れて部屋を出て行った。
おそらく、プリンの身体を洗ってやるのだろう。
エレナは一通り話を終えると黙ってしまった。
「はぁ……」
俺は椅子に座ったまま、一つ溜息をついた。
「くだらねぇな」
「……え?」
俺の一言にエレナは驚いた様に顔を上げる。
「ただ自分達が弱いのを理由にエレナのことを嫌ってるんだろ?
なら逆恨みも良いところだ。
裏切り?エレナの事情を知らない奴が勝手に言ってることだ、気になんかするな」
「でも……私は本来あの学校にいるべきじゃ……」
何言ってんだよこいつは。
栄養がおっぱいに回りすぎて頭にはいってないんじゃないか?
「自分の居場所ってのは周りに決められるようなことじゃねぇよ。
エレナが学校を移りたいんなら俺も一緒に母親に頼みにいってやる。
第十学校に残りたいなら一緒に残ってやる。
たとえ何があってもお前は俺が守ってやる!」
……しまった。
何故だ…何故俺はこんなキザなことを言ってるんだ!?
しかもエレナと出会って大して日にちも経ってないぞ?!
……いや、これは勝手に俺の口が動いてやったことだ魔王様は関係ないぞ。
「レン君……あの時もそう言ってくれたよね……」
「あの時?」
「……そっか、やっぱり覚えてないよね……でも嬉しいよ、そう言ってくれて」
エレナは頷くと笑顔になって立ち上がる。
「うん、レン君もミイもいる!
だから私は怖くないよ!」
「お、おぉ…そだな」
「ほらっ!夜ご飯の準備買いにいこ!」
「うわ!え、マジ?」
エレナは俺の手を引っ張ってリビングから、連れ出した。
魔王様だけど……さっきの笑顔は正直クラっときちまったぜ……
俺は少しにやけながらエレナについていくのだった。