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「ゲホッゲホッ……ブヒッ…ブヒヒ……」
「本当にこの方は大丈夫なんですか?ずっとニヤついているみたいですけど」
「通常運転だから大丈夫よ」
「そ、そうですの……?」
No.開発室を出た俺たちは、扉を出たところにあった階段を登って最上階の廊下へとたどり着いていた。ミイ、柊菜によってトドメを刺された俺は、満身創痍の状態だった。2人が肩を貸してくれて何とか立っている状態だ。あぁ……いい匂いがする。ガクッと首が下に向いてるので目線は下向きになるのだが、俺の目線は全て、右側で支えてくれている柊菜の胸元に釘付けになっている。胸元のボタンがちぎれているらしく、この体勢からなら胸の谷間が丸見えなのだ。
もう興奮しまくりです、はい。
「とりあえずこの陰で休憩するわよ」
「はい」
ドサッ
「ブッヒィ!?」
そっと、ではなく文字通りドサッと地面に落とされる俺。ミイさん、かなり怒ってるようです。
「てて……これじゃ闘いになっても役に立つ気がしねぇんだよなぁ……」
「大丈夫ですわ。私にかかれば統帥など瞬殺です」
瞬殺って……この子怖いな。
「てか何で君……柊菜もこっち側の階段に来たんだ?用があるのは統帥室じゃなくて、サーバーとやらがある部屋じゃないのか?」
「それは……ま、まぁ別に良いんです!旅は道連れと言えじゃないですか」
「とりあえずあんたは少しそこに寝転びなさい」
俺と柊菜の会話を遮るように、ミイが座り込んでいた俺の肩を掴んで後ろへと倒す。床ドン!?床ドンですの!?
おっと、口調が移っちまった。
「主に下半身が痛む」
「はいはい……『セフィーリア』」
パァァァッ
俺の下半身を中心が神々しい光に包みこまれた。じんわりとした温もりが広がると同時に、徐々に痛みが和らいでいく。これは回復魔法の一種で、発動者の魔力で怪我した者の回復力や魔力循環を高めて傷を癒す魔法。無理矢理俺の身体の魔力を引き出して傷の治癒に向かわせているとも言える。
「凄い……これは特級魔法に認定されている光魔法……それを使えるなんて……」
「理論さえ分かれば簡単よこんなの。魔力の促進をするだけだけだし」
「その理論が難しいから特級魔法ですのよ!?」
「ま、優秀な豚が教えてくれたから理解しやすかったてのもあるけどね」
「ブヒッ」
「………」
柊菜が驚きと感嘆の表情を浮かべて俺たちのことを見つめる。ん?ちょっと軽蔑の表情の方が多くない?俺にだけかな?
「……こんなもんね」
「えぇ…これだけかよぉー俺の下半身は全然満足してないんだけどぉー?」
「あんたの魔力も私のも少ないのよ! これ以上使ったら闘えないから言ってんの!」
「そんなぁ……じゃあ柊菜の魔力でも使わせてもらおうかな」
ピトッと柊菜の手に触れる。おお!スベスベのいい感触じゃないか!やっべこれセクハラだな。
「どうやって私の魔力を……っ!?」
バッ!!
柊菜が咄嗟に俺の手を弾く。
そんなに強く弾かなくても良いじゃん!
すいません僕が痴漢です。
「………」
俺が触れたところを見つめている柊菜。そ、そんなに俺のタッチが嫌だったのか……ホントごめんなさい。
「つべこべ言わないで体力回復に専念しなさい! ついでに作戦を立てておくわよ」
「了解しました隊長!」