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「『フォース』」
火傷したところに息を吹きかけている俺をよそに、フィフスが超能力で攻撃を仕掛ける。身体の周囲が変な感覚に襲われると同時に自由を奪われる。また拘束するタイプの超能力か!
『自動重力調整、機動』
そして再び身体の動きが元に戻る。やはりこの能力、相手の重力操作に合わせて勝手発動している。奇妙だな……さっきから発動の時に女の人の声が頭に響いてるし。しかもこの声、どこかでは聞いたことあるんだけど、全然思い出すことができない。
何だか自分の身体だけど少し怖いな。
「……『フォース』の直接使用は効果なしか……ちっ」
フィフスは舌打ちをすると近くの壁際まで走り、棚から適当に本や硬そうなペンチなどの硬そうな物を俺の方へぶん投げてきた。
「な、なんだこれ!?」
フィフスは動きを止めず、ずっと俺に向けて物を投げてくる。投げられた物は空中に浮いたままで途中で止まり、俺の周囲を浮遊し始める。
「お前自身に『フォース』を使っても無駄みてぇだからな……」
すると空中に浮いてる物体が一斉に俺目掛けて飛んできた。本以外にもハサミなどの危険なものが含まれているため、当たったら絶対痛い。
しかも全方向からの攻撃なので、見切って避けるなんて離れ業は運動音痴の俺には不可能だ。
……そうか!俺に触れたらフィフスの重力操作は無効化される。つまり、今あいつが操作してるのは本などの物質のみ。俺の周囲の全てを操っているわけじゃない。
「頼むぞ……『ユグドラシル』!」
地面に亀裂が入ったかと思うと、そこから太い木の根が生えてきた。それは俺の周りをグルグルと取り囲んでいき、球場のホールを作り出した。
ガコココッと投げられた物体が衝突する音が聞こえるが、貫通する様子はない。もしフィフスに直接このユグドラシルのバリアに触れられると、破壊される可能性はかなり高いがそれならそれで反撃も可能だ。地面には迎撃用のユグドラシルが構えているからな。
この建物の白い物質はかなり硬い素材だと聞いていたが、ユグドラシルが貫通できてよかった。おそらくこの物質には魔力が通っているんだろう。そのため自然魔力を取り込むことで強化されるユグドラシルにとっては相性が良いものみたいだ。
「……木属性と相性が良いのは何か忘れてるみてぇだな『インフェルノ・ヴィン』」
バキィイッ!!!
ユグドラシルのホールの一部分がゴッソリと剥ぎ取られた。
「火属性か!」
ユグドラシルを地面から発生させたのと同じように、敵も地面から炎を吹き上げてきやがった。 俺が中央にいたのが功を奏したのか、ギリギリのところで攻撃を受けずに済んだ。剥ぎ取られた部分は燃やされたというよりは、焼きただれていて、敵の魔法がただの火属性ではないということを示している。
「『ユグドラシル』ッ!」
即座にホールの後ろ側を開き、足元から生えた樹木に乗って今までいたところから距離を取る。あのままホール中にいたら丸焼きになっちまう。
「逃げ足の速いやつだ……『インフェルノ・ヴィン』」
ズゴォッ!ズゴォッ!ズゴォッ!と、地面から火柱が吹き上がって俺に接近してきた。いや、火柱じゃないな。あれはマグマか!?
しかも俺が今乗っているユグドラシルの根元を次々と溶かしていっている。このままじゃ折れるな。
「くっそ!『ユグドラシル』!」
俺も負けじとユグドラシルを地面から継ぎ足していくことで足元を確保していく。
これはなかなかキツイな……自然魔力による補助があるとはいえ、ユグドラシルの使用には膨大な魔力を必要とする。あまり連発しすぎるのは危険だ。
「ん……?あいつ……」
俺はあることに気づき、一気に作戦を立てていく。この系統の魔法はあまり得意という訳じゃないが、仕方ない。
「面倒くせぇ……『ヘルブレイズ』!!」
5つの火炎玉がユグドラシルを完全に捉えた。『インフェルノ・ヴィン』は強力だがスピードの面では『ヘルブレイズ』に劣る。
「……どこに行きやがった……?」
しかし、ヘルブレイズが捉えたユグドラシルに乗っているはずのレンがいない。あったのは人型の木人形だけだった。
「こっちだ!!」
ドスッ!!!!!
鈍い音がフィフスの身体から響いた。
目の前にはレンが拳をフィフスの腹に押し当てている。
「ゴフッ……!!てめぇいつの間に……!!」
「さぁな……じゃあ肉弾戦といきますか!!」