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『そろそろ着くわね』
魔力不足を補う為に精神集中をして少しでも戦いやすいように準備をしているとセレナさんが声を上げる。
精神集中をすることで魔力変換をスムーズにし、無駄な魔力の生成を防ぐのだ。たこ焼きを食べたので少しくらいは体力面は回復したと思うが。
魔力の回復ってのは色々あって、大抵は飯を食べて寝たら回復している。
単純だって?そりゃ魔王ですから回復力も立派なんでふよ!
バシュっと音を鳴らして閉じていたオープンカーの天井が開く。到着したようだ。窓から見える景色も先程とは違って……
「こ……れは……!」
『あら?レン君は知ってるみたいなのね。そう、統治機関が開発しているのはこういう危険な兵器などが主なのよ』
「爆撃機……?見たことのないモデルだけど」
テレポートした場所は先程の駐車場と同じかそれ以上の広さの白色の広場。そこには大量のステルス機能搭載未原細胞製爆撃機が。
魔王モードの俺でも全滅させられなかった強力な兵器だ。
『使用時は常にステルス状態だからよ。強力な探知魔法じゃないと見つけられないわ』
「何でこんな所に爆撃機が……つーかこの数の爆撃機に襲われたら確実に死ぬ……」
『それは大丈夫。私の友人に頼んで監視システム管理室で操作してもらってるの』
だから監視カメラに映っても大丈夫よ、とセレナさんは付け加える。
「おお!なら早く白い箱に行ってエレナを助けねぇと!」
「エレナはどこに囚われているの?」
『まずは今いる場所の説明からね。この爆撃機用駐留所は白い箱の地下まで続いているの。そしてそこにあるエレベーターに乗って白い箱の本部まで上がる』
エレベーターか……それなら一気に進めそうだ。階段を駆け上ることなんてなったら体力的に無理だ。
『エレベーターは最上階までは続いていないの。それの1つ下の階に止まるわ。で、その階には2つの大きな部屋がある。大演習所とNo.開発室ね。その部屋はそれぞれ違う最上階の部屋に繋がっている。あなた達はNo.開発室に入って統帥室を目指しなさい。エレナはそこにいる』
駐留所を進みながらセレナさんが建物内部の説明をしてくれる。セレナさんがいなかったら路頭に迷うところだったな……
『統治機関の職員達はほとんど輝竜祭にかかりきりで白い箱にはいないはずよ。安心して突き進みなさい』
駐留所の端、小さめのエレベーターの前に着くと、セレナさんは止まってケーブルを自身の箱に引っ付ける。
パカッ
「うぉっ!?は、箱が開いただと!?」
セレナさんの箱の上側が開き、その中をケーブルでいじる。シュールすぎるぜセレナさん……
『あったわ。はい、レン君。少しくらい魔力の足しにはなると思うわよ』
何故か箱の中から出てきた栄養ドリンクらしきビン。怪しげなオーラがプンプンだ……
「ま、マジですか。これ大丈夫なやつなんですかね?」
『大丈夫よ〜 冷えてはないかもだけど。味は保証できないけど魔力回復に加えて滋養強壮、精力もアップするわ」
「怪しさ満点ね……さすがサイエンティスト」
ジト目でドリンクを見るミイ。
ビンを開けてみると少し甘酸っぱい匂いが香る。ピンク色か……
俺は意を決してゴクッと栄養ドリンクを飲み込んだ。シュワッとした感覚が喉に走る。何だか普通のジュースのような味だ。
「意外と普通……うぉぉ!?」
「ど、どうしたの!?」
「なんか元気出た」
『そりゃ栄養ドリンクだもの』
「……慌てて損したわ」
ーー
『さて、そろそろ行った方がいいわ。あの人がエレナをどうするのかは分からないけど、時間はそんなに残ってないはず』
「はい。色々とありがとうございました。エレナは俺たちが絶対に取り返してみせます」
『後始末は超科学研究所が何とかするわ。エレナを連れ去ったっていうのを使えば統治機関も文句は言えないだろうし』
エレベーターが開き、俺とミイは中に入る。セレナさんは入らず外に浮かんだままだ。
『バッテリー切れよ。あとは任せるわねレン君、ミイちゃん』
そう言うとセレナさんはコロンッと地面に転がって動かなくなってしまった。
ふむ、なかなか凄いものを開発してるんだな……
「さぁ行くわよレン!」
「おう!」