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「何やってんのよあいつは……」
画面に映るアホ面。金髪の少年が大きく口を開け「がーん」と言っている。しかも、その周りにはハゲの男が大量にいるという混沌とした状況だ。
全く……相手が分身する前から攻撃してれば、タイミングが無くて大技が発動できないっていう状況にはならなかったのに……
私は座席に座りながら大きくため息をつく。
「どうなるかねぇ、レンの奴」
「あんたは……石田、だっけ」
「安田だ、ちなみに去年も同じクラスだったんだから覚えてくれてても良いと思うんだよな」
レンとエレナの試合を観戦していると、クラスの団体から抜けてきた前田が話しかけてきた。いつもレンと絡んでバカなことばかりしてる変態だ。
あんまり私は話したことがない。
「で、何か用でもあるの?」
「(つ、冷たい……)いやぁ、レンは勝つかなぁーって」
「どうかしらね。あいつ、本当に運動音痴だし」
そう、シャドラ兄弟の言った通りレンはかなりの運動音痴だ。
体力面に関しては何も問題なく、むしろ良い方だったりする。
しかし、ほとんどのスポーツができない。
例えばバスケットボール。シュートが入らない、ドリブルができない、パスができない。
サッカー。ボールにキックが当たらない。
野球。グローブのつけ方が分からない。
学校の体育では十高らしい成績を出している。他の生徒は魔法や超能力は苦手だが、スポーツなどは普通にできるので、レンはかなりそのことに関しては自尊心を傷つけられているらしい。
なんでも、デスパイアではスポーツなるものをしたことが無いのが原因なのだとか。
「たしかに、あいつは体育の時はマジで足でまといなんだよなぁ……
つーか、何でそれが試合に関係あんの?」
「戦いにおいては、魔法を使う者は中遠距離型が多いからよ。超能力者は個人個人で能力が全然違うから何とも言えないけど」
「なるほど。じゃあ距離をとれば良いじゃないのか?」
「それは無理よ。周りにはハゲがうじゃうじゃいるし。魔法を使おうにも、その隙に攻撃が速攻でされる。万事休すかもしれないわね」
「く……なんてこった……こうなりゃ……!
みんな!もっと応援するぞーー!!」
『おぉ!!』
私の言葉でレンがピンチなのをしった山田は、クラスメイトに大声で呼びかける。単純なのかどうなのか……こういうところがあいつと気が合う理由なのかしらね。
山田の掛け声で熱を帯びたクラスメイト達はさらに大声でレン達を応援し始める。私は特に声を出すつもりもないので、静かに観戦するために一番先頭の席を目指すことにした。