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「フィフス!しっかりしなさい!」
全身から血を流しているフィフスに慌てて駆け寄り、回復魔法を使って止血を開始していく。血こそは大量に流れてはいるが、身体には目立った外傷はない。もし心臓などが攻撃を受けていたら、私の魔法でも蘇生できやしない。
「……ぐ…シルヴィア…か」
「気がついた!?一体何があったの!?」
「……ちっ……うるせぇな……」
止血が終わり、血を作り上げるのを一時的に増加させる魔法を施しているとフィフスは身体を起こし、髪についたホコリを取るため頭を振った。
「……よく覚えてないんだが……何で朝日奈に俺は来てる?」
「え?そこから?」
「……記憶…喪失……?」
まさか、今さっきやられたの……?
「いや、何というか……超科学研究所に行ったことまでは覚えてるんだがそれ以降はボヤけた映像しか思い出せなくてな……屋上に来たあたりからは覚えてる。俺が全身から血を流しているのは白い髪の女に狙撃されたからだ」
最近のフィフスの様子がおかしかったのはそのせいかもしれないわね……でも性格が変わった後の事が覚えていないってことは、二重人格?それにしては変わってないところも多すぎた。じゃあ何が彼に起こってたというの?
「……何で……リンクなしでも……大丈夫だった……の?」
「はっきりとは分からねぇが、全身に魔力を通わせて敵の弾丸を全て受け流していたからみたいだな。だが敵の攻撃は俺の魔力を超えてきたから傷を負ったんだろ。くく……なかなか強い奴だな……」
フィフスはギラギラと赤い目を光らせて怪しげな笑みを浮かべる。闘志丸出しのハンターのようだ。
既に身体は動けるくらいに回復し、フィフスは柵の近くへと歩いていくと朝日奈の街を見下ろす。
「CodeNo.06、コードネーム『ぜクス』か……くくくっ、勇者の野郎以外にもここまで強い奴がいるとはな……
面白くなってきたぜ…!次に会った時は後輩とはいえ、ぶっ殺してやるから覚悟してやがれ……」
「あ、これいつものフィフスだわ」
「……中…二…?」
街を見下ろすフィフスはいつものように殺気を放っており、ヤル気のなかった最近とは全く違った雰囲気。
でも……魔力が減少しているのは……絶対に気のせいじゃないわね……
私は訝しげにCodeNo.05、コードネーム『フィフス』の姿を見つめるのだった。