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「で、統治機関との共同開発した機械ファーブニルなんだけどさ、よくあんな風に切れたねー さすが柊菜ちゃん」
お父様はおどけた笑い声を出す。いつもながら癪に触る笑いですわね。ただ普通に笑ってるように見えるが奥底では何を考えているか分からない。私にはお父様がいつも重要な秘密を隠しているように思える。
「別にあんなトカゲ、私の相手になんてなりませんわ」
「僕達は途中でプロジェクトを脱退したから知らなかったんだけど、まさかレーザーまで出せるとはね」
聞いてます?私の話。
「昔、ファーブニルのフィギュア見せたことあるよね?柊菜がビックリして大泣きしたやつ」
「そ、それは言わない約束でしょう!?」
「実はあれが機械ファーブニルのオリジナルになってるんだよね。フィギュアを未原細胞で構成して血液から創り出した核を埋め込んで……そしてその元となる素材を次々に投与していけば成長するのさ」
「さすがは科学技術に関しても最先端を行ってるだけありますわね」
「これ言って大丈夫なのかは分からないけど、あの上空から降ってきた廃棄処分の旧型兵器はファーブニルの素材になる予定だったんだよ。
だから隔離された厳山の頂上にファーブニルと旧型兵器がいたんだ」
なるほど……隔離されている上に頂上となれば一般人に疑われる心配はない。私達が侵入できたのはハーゲリオの者だと運転手に言わせておいたからだろう。
「どうやって降らしたかはトップシークレットだけどね。
何か他に聞きたいこととかある?」
部屋の明かりが元に戻っていき、大スクリーンも自動で収納されていく。
私は1番聞きたかったことをお父様に尋ねることにした。
「龍姫とは何ですの?私と何か関係が……」
「うーん、それはね……たしか、統治機関が研究資料を手に入れたとか……」
「また統治機関ですの?」
「そうなんだ、あそこは行政のトップであるのと同時に科学技術の最先端も担ってるからね。知りたいことは大体はあの機関が所持してる」
「……分かりました、なら今度統治機関に行ってみますわ」
私はソファから立ち上がると帰る準備をする。
「気を付けてね。ハーゲリオ財閥はビジネス上では統治機関と友好な関係だけど、サーバーの件や龍姫と件では多分最悪の対応をしてくるから」
「ふん、ならばその時は斬るまでです」
バタンッ
重厚なドアが閉まりきる時、お父様の朗らかな笑い声が聞こえた気がした。
「あら、まだ居ましたの?」
「はい、私はメイド長としての役目がありますので」
「へぇ……ま、お父様のこと、宜しく頼みますわね。貴女になら任せられます」
気の強い女は嫌いではありませんもの。
メイド長の肩を軽く叩くと私は下の階へ向かうエレベーターへと向かった。