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研究所 〈研究ルーム〉
何か身体を這うような違和感に襲われる。
虫?いや、違うな……皮膚で起きている現象ではない。
身体の中だ……
ゾワッ……!
「……ん……?」
「あ、起きた!」
目を覚ますと何故か眼鏡をかけたシルヴィアが。隣ではトゥエルが机の前に座り、ノートに何か数式の様なものを書き込んでいた。
俺は身体を起こし、先程の違和感は何だったのかと思い身体を触ってみるが、特に何も変わったところはなかった。
少し身体が気怠く頭が痛いだけか。
「シルヴィアか……何してんだ?」
「トゥエルに数学を教えてるの。あなたたち全然学校行ってないから知識が無さすぎるのよ?」
そういえば中学で習った因数分解とかしか知らねぇな。
「でもさすがトゥエルよ。とっくに高校の内容を殆ど終えてしまったもの。天才少女現る、ね!」
「……ぶい……」
トゥエルは字を書くのをやめると無表情でピースをしてくる。
「へぇー。 んじゃ俺帰るわ」
俺はベッドから出て、そのまま研究ルームの扉へと歩いていく。
「え?もう大丈夫なの?」
「早く帰りたいんだ。トゥエルは後で連れてきてくれ」
そう言って研究ルームを後にして廊下に出る。
シルヴィアは少し意外そうな顔をしていたが、俺の回復力に驚いていただけだろう。
「あら、もう大丈夫なのかしら、フィフス君」
「セレナか」
廊下を歩いていると見知った顔に呼びかけられたので俺は立ち止まった。 白衣姿に眼鏡をかけた女性、セレナ=レストルト。俺達を昔から知っている保護者であり、この研究所の所長でもある。
「あぁ、早く帰って寝たい」
「そ。 一応薬を渡しておくから、頭痛がしたら飲みなさい」
「ありがとう。 じゃあな」
セレナから紙袋を受け取り、研究所の出口を目指す。おそらく頭はもう痛くならないと思うから無駄だと思うんだがな。
「ちょっと様子が変ね……」
セレナはそう言うと眼鏡を外して廊下を早足で歩くフィフスを訝しげに見るのだった。