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「あ、あはは……さすが柊菜だな(……私があそこまで苦戦した意味が……)」
明らかに愕然とした表情をしている神無さん。わ、私、何か駄目なことでもしましたの……?
「と、取り敢えずこの兵器達を何とかしません?」
「……そうだな」
「(な、何だか黒いオーラが漂ってるのですが……)」
神無さんは全身から黒いオーラもとい殺気を漂わせてゆらゆらと何処ともつかない所へ歩き出す。
「神無さん後ろ!」
後ろから襲いかかる犬型兵器の姿が目に入った私は、警戒心なく歩いている神無さんに注意を呼びかけつつ援護しようと紫電を手に持って走り出す。
が、その行動は無意味に終わった。
「『波衝』」
突如、手にする『破聖の太刀』から黒いオーラが噴き出し、神無さんの身体を保護するように纏わり付いた。
「ガオォッル!?」
「はぁっ!」
犬型兵器は太刀から発生した黒いオーラによって拘束され、そのまま空中に宙吊りされる。
「ギャウンッ!ギャ……」
「せいっ!」
神無さんが太刀を抜いた、と思うと一瞬にして兵器は粉々に斬り裂かれた。それも早過ぎて剣筋が全く確認できないほどだ。
黒いオーラは再び太刀へと吸収され、鞘の間に入っていく。そのオーラはやはり太刀と同じように、暴力的かつ好戦的で破壊的だ。
私はこの太刀に何か危険なものを感じる。
本当に神無さんはこの太刀を扱いきれるのでしょうか……逆に取り込まれてしまうのでは……
「いくぞ柊菜!」
「は、はい!」
神無さんの声と共に私も紫電に電撃を纏わせ、襲いかかってくる兵器を倒すのだった。
ちなみにその頃のユウさんはというと……
「お兄ちゃん!あそこの岩石の中にダイヤモンドらしきものが!」
「おぉ!採掘だ!聖滅剣!」
「あ、水晶だったね」
「次だ次ぃ!」
金になりそうな宝石を見つけるために採掘に没頭していた。
……周りを兵器がうじゃうじゃしてるのに気づかないんですか。
「円崩!円崩円崩!うぉぉぉおっ!!」
「ば、バーサーカーがいますわ……」
強烈な剣技を放ち、敵を殲滅していく神無さん。その勢いは恐ろしい。スイッチの入った神無さんは怖いですわね……
ドォンッドォンッドォンッ!!
円崩による筒状の光が兵器を消滅させたりすることで、火山が大きく揺れる。
私は特にすることもなく、たまに襲ってくる兵器を壊しているくらいだ。
「ん?何か揺れてるような……」
「しゅ、柊菜!!」
「ユウさん! どうしたのですか?そんなに慌てて……」
異変を感じていた私のもとに大量の汗をかいたユウさんが慌てて走ってきた。背中には刀音ちゃんを背負っている。
「取り敢えず僕の手に掴まって!」
「は、はい!」
手に掴まるとユウさんは魔力を生成し始め、周りを見渡す。
「神無は……あそこだね、よし!『イグナイト』!」
グワンッ!とユウさんの身体が明るい光に包まれる。
い、イグナイト!?ってことは今から走り……
「ひぃぃいっ!? は、早過ぎますわぁぁあ!」
「神無、掴まって!!」
片手で私を掴み、空いた方の手で神無さん、背中には刀音ちゃんを乗せたユウさん。
完全に定員オーバーとしか思えない体制なのだが、それでも彼は魔法のお陰で物凄いスピードで走り出した。
「どうしたユウ!まだ兵器は倒し終わって……」
「噴火」
「え?」
「火山が噴火するんだぁぁぁぁあ!!」
「「えぇぇぇぇぇ!??」」
ユウさんはそう叫ぶと私達を連れて物凄いスピードで山を駆け下りていく。
ドォォォォォォォォォォォォオオオオンッ!!!!!
少し離れたところで大爆発する音が聞こえた。