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双剣『紫電』を顕現させると物凄い勢いで迫ってくる兵器達に向き合い魔力の生成を開始する。
私の方が不利ですわね……一体一なら負けるはずはありませんが、あの数となると……
空を見上げてみるとまだまだ兵器の数は増えている。三分の一ほどは火口へと落下していき、マグマの中に落下。あっけもなく溶け去ってしまっている。
「神無さんがいてくれれば……仕方ないですわ、私一人でやるしか……!」
もう目前まで犬型兵器と馬型陸機動兵器が近づいている。神無さんの大剣ならば、こういう集団の敵なら一刀両断できるから簡単なのだが、私の攻撃は範囲が狭いので数の多い敵は苦手なのである。
取り敢えず一閃で目の前の敵を倒して他の敵は散閃で……
「こ、これは…?」
私は手に持っている紫電を目にすると走り出そうとした足を止めてしまう。
「ガァウッ!!」
「こっちだ!『円崩』!」
突如、私に飛びかかろうとした犬型兵器が筒状の光に貫かれて消滅した。
この声は……
「神無さん!」
「すまない柊菜!少し時間が掛かってしまってな…」
その発生元はユウさんの元へと移動していた神無さん。息を切らせている様子からすると、用事が終わってすぐにこちらへ駆けつけたのだろう。
「神無さん、その刀は……」
「あぁ、これかこれは……おっと!」
神無さんの持つ刀が素早く動いたかと思うと、こっそりと私の後ろへ近づいていた陸機動型兵器を一刀両断する。
「新しい愛剣『破聖の太刀』だ」
刀をピッと振り、兵器を斬った跡を振り払うようにして腰についてある鞘に収める。
長さは大剣『滅神剣』と同じで、身の丈よりも長い太刀。その刀身は真っ黒なのだが、光の加減によっては金色の光を発生させており、幻想的な雰囲気を醸し出している。
だが私は先の一振りで気づいた。この太刀の内には破壊衝動ともいえる牙が隠されていることを。敵を切り裂くその瞬間、太刀が歓喜の声を上げたような気がしたのだ。
少し……危険な香りがする太刀ですわね……
でも神無さんなら、それを抑え込めるくらいの実力はありますわね。心配無用でしょう。
「ユウが見つけた『厳光岩』なんだが、なかなか厄介な鉱石でな。どうやら黒い岩石に覆われていない状態だと短時間で腐敗してしまうらしいんだ。だからその場でこの太刀を創ってもらったわけだ」
「なるほど、急いで、とはその事だったのですわね」
「そうだ。ついでに鞘も創ってもらった」
「だから遅かったんじゃありませんの!? 私、一人でドラゴンと闘うっていう暴挙に出てたのですわよ!?」
「あぁ、忘れてた。何処にいるファーブニル!新しく生まれ変わった破聖の太刀で切り刻んでくれる!」
鞘から太刀を抜いた神無さんはその長い刀を振り回す。
非常に危険な行為である。
「か、神無さん。ファーブニルならもうとっくに……」
「ん?私の強さに驚いて逃げたのか。ふはは!情けない奴め!」
太刀を元あった場所に収めると神無さんは笑い声を上げて周りを見渡す。
「いえ、私が倒しましたわ……」
「……柊菜が?」
「はい……」
「……」
私のその言葉を聞き、言葉を無くす神無さん。