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「……シュゥゥ……」
ファーブニルの機械が黄色に発色している。先程の状態は収まったようだ。口の機械からは所々から火を漏らし、破壊された両翼の機械は激しく電流を垂れ流しながらショートしている。
おそらくファーブニルにはもう飛べませんわ。
なら飛行攻撃は無視して、スピードで撹乱しつつ剣技を畳み込むだけですわね。
「ガァァッ!!」
「はっ!」
ファーブニルが吐いた黄色の炎を双剣で受け流し、懐へと潜りこむ。
「『一閃』!」
まずはファーブニルの腹部へ向かっての一点集中攻撃。
体制を低くした私の右手に持つ『紫電』が紫の光を帯びて高速で突き出される。
「グォァアッ!」
一閃はファーブニルに弾かれることもなく腹部に直撃する。
しかし、その鱗の堅牢さに攻撃が防がれてしまった。
「まだまだここからですわよ!!『二閃』!」
体制を崩しながらも強引に左手の双剣を突き出し、それを追うように右手の双剣も光を発生させて放たれる。
「まだまだぁ!!『散閃』!」
腹部へと二閃を打ち込み、鱗を大方剥がすことができたので、更に追撃を行う。
両手の双剣による超連続乱舞だ。
左右から目にも止まらぬ速さで何度も斬撃を放ち、反撃の暇を相手に与えない。
「ガガッグッ……ガァァァァ!!!」
「これで……!!」
私はファーブニルが仰け反ったのを確認して敵の側面へと回り込む。
双剣『紫電』は眩しいほどの光を放つ電流を纏い、その刀身は漆黒、その真ん中には金色の筋が一本入っている。
「終わりですわ!!『紫閃』!!!」
バチチチチッ!!!
両手に持つ双剣が大量の電流を発生させて、その電流は刀身を形どってリーチを伸ばす。 その長さは通常の紫電の2倍。
交差させて構えられた双剣は対象物へと近づくごとに輝きを増し、金と紫の光で私達を明るく照らす。
「ガァァァ……ァ……」
「……静かに眠りなさいませ」
腹部を両断。 半分に切り分けられたファーブニルは全身から魔力の粒子を吹き出すとその体を地面に横たえた。
……殺すこともなかったですわね……でも、これでもう……昔の私とはお別れですわ……
私は紫電を解放すると魔力の使い過ぎか、力が入らなくなって座り込んでしまった。
『……我が……一族……』
「ぐっ…!また…ですの……!?」
再び襲う謎の頭痛。 先程と同じく低い声が頭の中に響き渡る。
『……魂……の……契約……』
「くっ……ぅう…」
そうですわ!さっきファーブニルの様子もおかしかったから今も…!
頭を抑えながらもファーブニルの様子を伺う。
しかし、ファーブニルは既に全身が光に包まれて今にも消え去りそうになっている。
『……一族との再会を我は願う。龍姫の名の元に……』
「また…!龍姫……って一体……!? ……え? 何この光……!!」
唐突に私の身体が光に包まれる。
この光は……ファーブニルのものですわ!!
「あ……あれ?痛くない……」
全身が浄化されるようなファーブニルの光が私を包み込み、身体の中へと入ってくる。まるで私の身体がそれを待っていたかのようだ。
「ファーブニル……金色の龍……一体どういう関係が……」
光は全て私へと移動し、ファーブニルのいたところには機械の残骸しか残っていなかった。
徐々に光は私の中へと吸収され輝きが収まっていき、最後にはいつもと同じ状態に戻ってしまった。この光はファーブニルの魔力?でも、魔力の受け渡しは不可能なはず……
「一体何だったのかしら……」
光は収まったが、身体はまだ暖かい熱を帯びている。
それに、先程殆ど尽きたはずの魔力も回復している。
じゃあやはりあの光は魔力なのか?
神無さん達はどうなったのでしょう……あれは本当に鉱石だったのでしょうか。
既にユウさんに呼ばれて火口付近へ向かってから少し経つ。
「……ん?……何ですの、あの影……」
私のいる場所は火口の淵の方で、周りは崖に囲まれている。そこから見える空から何かの影がたくさん降ってくる。
透明な所から大量に降って……
「ってあれは兵器じゃありませんの!?」
降ってくる姿をよく観察すると、山を登っている途中に襲われた犬型兵器や陸機動型兵器など、様々な種類の兵器の姿が確認できた。
「ち、ちち、近づいてきた!?」
唐突に起きた出来事に慌てふためいてしまう。
その数はおそらく数百はあるだろう。