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「ま、眩しっ……!」
「目、閉じといた方が良いよ」
真っ赤な光が僕達を含む全員に放射される。ファーブニルもその強烈な光で動きを止めているみたいだ。
刀音は僕の身体から落ちないためにしがみ付いているので、顔を背中に押し当てて光が目に入るのを防いでいる。
五重魔法陣というのは、その名の通り魔法陣を五つ展開し、それぞれに組み込まれた強力な魔法を連鎖的に発生させる。 参の型 慟哭 は火属性と闇属性と光属性が主軸に構成され、最もバランスが取れて高出力をの誇る五という数字の魔法陣が互いに自然魔力も含めて上昇させる。
ドドドド……
徐々に爆音は減少していき、赤の光も小さくなってゆく。
「お兄ちゃん、あれが……?」
「うん、本に書いてあった通りだ。
あれが厳光岩……」
巨大な聖剛剣の先で金色の光を放ち、その圧倒的な存在感を醸し出しているのは鉱石なのかどうかも分からないほど全てが金色で包まれた玉のようなものだった。
「お兄ちゃんあれって金た…」「それ以上は言わんでいい」
火口沿岸部〈厳山〉
「くっ…!何ださっきの光とあの金色の玉は…!」
私はファーブニルと戦闘中だったのだが、突然山全体を包んだ赤い光のせいで動きを止めてしまっていた。ファーブニルも同様に眩しかったようで、私は攻撃されずにすんでいたが。
「グォォォアッ!!」
「がっ!さっきと段違いの威力じゃないか…!」
ファーブニルの金色の尻尾による真横からの攻撃を大剣『滅神剣』で防ぐ。だが、先程の光のせいなのか攻撃の威力がかなり上昇しており、その衝撃で私は後ろへと吹き飛ばされる。
「はぁはぁ……くっ、そろそろ本気になったみたいだな……」
ファーブニルの身体に付属している機械は闘い始めの頃は焦げたような黒色をしていたが、現在は機械の所々が黄色に発色している。
おそらく、その機械の効果でパワーもスピードも桁違いに上昇している。
私1人じゃマズイな……
吹き飛ばされたものの、なんとか空中で身を捻って着地することができたので、即座にファーブニルの攻撃に備えて武器を構える。
柊菜は……まだ怯えているみたいだ…ん? 何か様子が違うような……
先程までの柊菜は座り込んだまま身体を抑えて俯いていたのだが、今は茫然と輝きを放つ玉を見ている。
とはいえ、闘おうという意識は見られない。
ユウは? 先程の仕業がユウだとすれば、あの玉は私達が求めている鉱石ということになる。
あとはあの玉を手に入れ、この山を急いで下山すれば良いだけだ。
別にファーブニルは倒す必要はない。 まぁ私からすればそれは負けに等しいのだから、物凄く悔しいのだが。
「といってもユウがこっちへ来てくれないと…!私達は向こう側には行けないのを分かってるのか!?」
「ガォッ!」
ファーブニルの放つ炎の球を軽く大剣で軌道を変えて避けながら、私は柊菜へと近づいていく。ファーブニルの攻撃が当たってしまうと危険なので今までは離れていたのだが、彼女の助けなしでは二人とも負けてしまうだろう。