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噴火口付近〈厳山〉
突如現れた機械化ファーブニルを神無と柊菜に任せ、僕と刀音は噴火口の周りに存在するであろう鉱石を探していた。
これといって噴火を起こすような気配は感じられないが、火口からは煮えたぎるマグマや溶岩が見える。 僕達は魔法によってある程度の熱は無効にしているので火傷になる心配はないが、もしこの火口に落下すれば全身大火傷どころではすまないだろう。
「どうかな刀音、見つかった?」
「うーん、どれも似たような黒い塊しかないよ……」
「そっか、じゃあ次はあの岩だ!」
僕は手に持つ『砕牙の剣』を巨大な岩に向けてぶん投げる。剣は飛距離と比例して体積を増していき、突き刺さると岩に亀裂を与え、その後も体積を増やして岩ん粉砕する。
この剣は最初は中剣ほどのサイズなのだが、時間が経つにつれて刃のサイズがある一定のサイズまで増加する特殊な物。 最大時には大剣ほどの大きさを誇る。
僕達はこのようにして岩を破壊しつつ鉱石を探していたのだ。だが、岩の中に埋まっているものは殆ど溶岩ばかりだった。
『厳光岩』
それが僕達の求めている鉱石。
放つ輝きはファーブニルの金色の鱗のように見るもの全てを明るく照らし、硬度はダイヤモンドにも劣らないという。
岩石の中に紛れているのなら一眼で分かるはずだ。 でも、どれだけ採掘を繰り返してもまだ見つからない。
遠くで行われている神無達の闘いも熾烈を極めており、何故か動かない柊菜がいる分、神無達の方が不利と思われる。
すぐにでも鉱石を見つけて助けにいかないと……!
「お兄ちゃん!さっきから思ってたんだけど、あのマグマの中……何かない?」
「マグマ?」
背中に乗っていた刀音はマグマの中心を指差す。僕は目を凝らしてその中心をよく見てみる。
「……確かに。何か機械のような、黒い塊があるね……」
「でも、普通なら溶けちゃうんじゃないかな?」
刀音の言うとおりだ。
もし、それが機械だとすれば超高温のマグマの中に入って原型を留めているのはおかしい。
なら、何なら解けずに形が残っていられる? ダイヤモンドでさえ溶けてしまうかもしれな……ん?
「もしかして……あれが『厳光岩』…なのか?」
僕と刀音はマグマの熱によって大量の汗をかきながら、マグマに沈んでいる黒い塊を見つめていた。