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「はぁっ!! 」
再び私に襲いかかるファーブニルを神無が大剣でけん制する。ファーブニルの巨体は身体を大きく動かして神無と距離を取る。
「柊菜!大丈夫か!?」
「……っ」
震える身体を自分でギュッと握り締める。
あの時のことはハッキリとは思い出せない。燃やされた村はあの後どうなったのか……私はその後どうやって家に着いたのか。
私の動揺につられて双剣に通う魔力が減少していく。
剣技にとって魔力の減少は剣自体の弱体化へと繋がる。双剣『紫電』の刀身は輝きを失い、纏っている紫の電流は殆どなくなってしまっていた。
「ガァァウッ!!」
怯えて動くことのできない私をよそ目に神無とファーブニルの闘いは続く。ファーブニルはその機械化された頭の口から神無へ向けて炎を吐き出す。神無1人分の大きさはある炎の球が彼女の身に襲いかかる。
神無は滅神剣を縦に構えると、その刀身を盾のように扱って炎を防ぐ。 魔力によって強化された大剣は普通なら炎を消滅させるのだが、相手の魔力も相当なもので消滅することなく大剣と押し合いになっている。
「ぐっ!!」
神無は押し負けまいと更に魔力を生成し、炎とぶつかり合う大剣に流し込んでいく。すると一段と大剣の黒色と纏っているオーラは強大になり、炎を消滅させていく。
「ガァッ!!」
「なっ!」
その隙を見逃さない訳はなく、ファーブニルは黄色の炎で神無へと追撃する。 その炎は機械で強化されているのか、先ほどの赤い炎よりも高濃度の魔力が練り込まれている。
「ぐっ……あぁぁぁあ!!」
その追撃を受ける神無を目にしている私はその場を動くことができず、まだ恐怖に身が竦んでいるのだった。