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「グォァァァアッ!!!!」
片翼の機械を失ったファーブニルはバランスが取れなくなったのか、慌ただしく翼を羽ばたかせて着陸した。 壊された機械は片翼から外れてそこら中に飛んでいき、私の所へも転がってきた。
私はその機械を手に取り、仕組みを確認していく。これでも機械を扱う会社の令嬢だ、仕組みくらいちゃんと見れば直ぐに分かる。
「こ、このマークは……」
「柊菜!!そっちに行ったぞ!!」
「えぇぇっ!? し、『紫電』!!」
神無の言った通り、ファーブニルは私目掛けて物凄い勢いで疾走してくる。頭の機械が黄色く光っているので、恐らくその頭で攻撃しようと思ってるのだろう。
私は顕現させていた双剣『紫電』を構えて紫の電流を双剣に流し込む。
ファーブニルの壊された翼は右側……!ならばそちら側に回避して、すれ違い様に翼ごと切り落としてくれますわ!!
「はぁぁぁぁあっ!!!」
「グォォォォォォオオオオオ!!!!」
近づくにつれて大きくなるファーブニルの咆哮。それは私の耳ではなく頭に響いてくる。まるで、私の記憶に訴えかけるかのように……
「っ!!??」
突如、私の脳裏にあの時の景色がフラッシュバックされる。
『だ、誰か!! 家が……村が燃えて……!!』
燃え盛る私の家。迷子になっていた私が居候させてもらっていた家だ。
『グォォォォォォオオオオオ!!!!!!!』
天空から炎を吹き、舞い降りたのは金色の鱗を持つ龍。その姿は太陽の光によって輝いていて、この村を破壊した元凶だが神々しくも感じられる。
『わ、私の方に…!!誰か!!』
全身を更に輝かせて私に襲いかかるファーブニル。
幼い私は剣技を上手く操ることはできず、ただ金色の龍が牙を向くのを怯えて眺めることしかできなかった。
「きゃぁああああ!!!!」
「柊菜!?」
疾駆するファーブニルを前にして私の身体は恐怖に包まれ、反撃のことなど頭から消失し必死に横っ飛びで金色の龍の突進を回避した。
「うぅ……」
「グォォァァァァアア!!」
「っ!!」
ファーブニルの咆哮を聞くたびに再生される燃え盛る村と襲われる幼少の私。
怖い……!! この龍が……この龍と向き合っているのが怖い!!
私は震える身体をどうする事もできず、力の抜けてしまった足のせいで地面に尻餅をついてしまった。