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エレナ宅
「疲れたぜ……」
「誰のせいで疲れたと思ってんのよ」
「ミイ」
「あんたなかなか良い根性してんじゃない」
ゴキゴキゴキゴキッ
ミイは指の関節や手首を鳴らして俺を睨みつけてくる。
ぷぎぃぃっ!!! ロリっ子に睨みつけられるのと気持ちぃぃいっ!!
「夜ご飯の用意するから、ミイ手伝ってー」
「はーいお姉ちゃん。
……ちっ、命拾いしたわね」
なんか今日のミイはかなり機嫌が悪いな。トゥエルちゃんとロリキャラが被ってるのが気に食わないのか?
あ、トゥエルちゃんはあの後シルヴィア先生と病院に残ることになったらしいです。
「てて……まだズキズキしやがる……とりあえず着替えてこよ」
シルヴィア先生に開けられたドアに思いっきり頭をぶつけたことを思い出し頭が痛くなる。
テレポーターから家までは少し距離があり、汗をかいてしまったため服を着替えるために俺は自室へと向かった。
ーー
レンの自室
この部屋にはレンとエレナとミイの3人でフルードというリゾート地に海水浴へ行った時に、空から降ってきた黒い球が机の上に飾ってあった。
その球は漆黒の闇を連想させる程に真っ黒で、部屋の窓から差し込む陽光も全て吸収し、反射している様子は伺えない。
その球の正体はというと……
『(くぁぁあ!暇だ!)』
『(あらあら、レンさんがいないと面白味がないですね)』
『(つーか、いつになったら元に戻れんだよ)』
『(意外と勇者さんの除滅が強力でしたから、そう簡単には戻れないでしょうね~)』
『(くぅぅ、早く暴れてぇ!)』
『(私はレンさんと話してみたいです……)』
彼女達はこの世界であるシード(SEED)とは別世界のイノセントで魔王を務めていた『クルセイド』。 何故かここ世界へ飛ばされ、イノセントで勇者だったユウ=クレハにこの状態に追い込まれたのである。
この状態は絶対の護りを得る代わりに、通常の状態へ戻るのが時間がかかるのだ。
「ニャア」
『(お、おい!ホムラ! またこいつ来たぞ!)』
『(あら……これは困りました…ね……)』
部屋の開いたドアから入ってきたのはレンの飼い猫である黒猫プリン。 『クルセイド』の球と同様に綺麗な黒い毛並みである。
『おい!どっかいけ!』
「ニャア? ニャアァァァッ」
『(ちょっ……ダメですよ!刺激しちゃ!)』
珍しくホムラが少し声を高くする。
温厚な彼女とはいえ、これから始まることはものすごーく嫌なことなのである。
『(だってよぉ……)』
『(ほら…きました……私は頑張って眠ることにします……)』
『(いやぁぁぁぁ!!!)』
「ニャアニャアァァァ」
元魔王である彼女達も耐えられない、地獄の時間が始まった。