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「居候させてもらって、しかも学校まで通わせてもらってるんだから行かないわけにはいかないよねー」
ぐぬぬ……このロリっ子がぁぁ……!
「うーん、確かにレン君も紹介しておかないとね……記憶喪失の前、お母さんとは何度もあってるんだし」
うーむ、その話を持ち出されるとなぁ……
一応俺はエレナに記憶喪失という嘘をついてる。その方が全てうまくいくからだ。
でもそれは本当に良いことなんて思ってはいない。
ミイには打ち明けてはいるが、エレナにはまだ言う勇気がない。
物心ついた時から俺はデスパイアのこじんまりとした山に一人でいたんだ。
今俺たちがいる家のあるような山のな。
でもエレナとは会ったことはないんだ。
何度も思い出してみようと思ったが、思い出すのは小屋で一人で暮らす自分の姿だけだ。
それ以外はない。
「……わかった、行くよ」
「あら、素直に行く気になったのね」
「まぁ世話になってるしな」
「じゃあ決定だね。 お昼食べたら行こっか」
エレナは笑顔になると昼食の用意をするために台所へと向かった。
……言いたくねぇなぁ。
俺が真実を告げると、この笑顔が消えて無くなってしまいそうで、怖かった。