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ひゅるるるるっ!!
ガンッ!
「いぎゃぁっ!!?何だこれ!?」
別荘の外でカキ氷を持って歩いていると(ミイとエレナに買ってこさせられた)上空から何かが降ってきて、俺の頭に直撃。 俺は危うくカキ氷を落としそうになった。
「いてて……黒い球?」
俺はカキ氷の乗ったお盆を置くと上から降ってきた黒い球を手に取る。
本当に真っ黒な球で、艶やかさもあり、綺麗な輝きを放っている。
「へぇ、良いな。 持って帰るか」
その球を服で拭い、砂を取ってやると上着のポケットに入れる。
「やべっ、カキ氷溶けちまう!」
そして急いで別荘へと向かうのだった。
『(おいホムラ!何だよこいつ!)』
『(あらあら、拾われちゃったようですね)』
『(ちぃっ!元に戻ったら絶対ぶっ殺す!)』
『(ふふっ、身動きが取れないのにどうするんですか?)』
『(それは……!)』
『(今はこの少年に付いていくしかないですね。
それに……少しタイプの男の子ですし)』
『(おい!マジかよ!)』
『(あらあら、シノも同じように思ってましたの?)』
『思ってねぇよ!』
「うぉっ!?誰だ!?」
俺は突如発せられた声に驚いて周りを見渡す。
しかし周りには誰もいなかった。
空耳かな……
『(ふふ、図星でしたの?)』
『(違う! こんな得体の知れない奴なんか知らねぇ!)』
『(まぁ、そりゃそうですね)』
ホムラは微笑むと少し考えごとをする。
この少年の魔力……いや、そうでもないか。
黒い球の中にあるホムラとシノの意識。 彼女達はユウの攻撃によって黒い球の型に封印されてしまったのだ。
魔力が全快すれば元に戻るのだろうが、ユウの攻撃が強力すぎておそらくかなりの時間がかかるようだ。
それまでは気長に待つしかない。
『(早く戻ってこの子を襲いたいですね〜)』
『(お前が言うと変な意味にしか思えないんだが)』
『(あらあら、勿論そっちの意味ですよ?)』
『(……もう知らねぇ)』
『クルセイド』の2人はお互いに会話しながら元に戻るまでを過ごすことになったのだった。




