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「この人は私に会いにきただけなんです!だから不審者じゃありません!」
「フリーズロック」
飛びかけた意識が再び持ち直した。
あっぶねぇ、さすがにこれ以上気絶したら身体に悪影響あるだろうしな。
てか何で俺も凍ってんの?
『了解しました、警備に戻ります』
マッチョはそう言うと、簡単に氷を破壊して何処かへと去っていった。
「……ふぅ。
……もう!レン君!何でじっと家で留守番してないの!」
「フリーズロック」
マッチョに事情を説明して助けてくれた女の子……エレナが説教を始める。
何でって言われてもなぁ……
「プリンちゃんが教えてくれなかったら、レン君捕まってかもしれないんだよ!?」
何でここにエレナがいるんだ?という俺の疑問は余所に、エレナの説教は続く。
「フリーズロック」
「さっきの陸機動人型兵器はプロトタイプの警備だから、その程度のケガで済んだんだよ!?
本部隊のゴリラタイプだったら本当に命も危なかったんだよ!?ねぇ、聞いてる!?」
「と、とりあえず氷……」
先程から氷の量がどんどん増えていっている。
体温がすでに凄いことになっていて、話すこともままならない。
「ミイ!やめなさい!メルト!」
エレナが魔法を発動すると魔法陣が俺ごと氷を包み、ジュワッと水が沸騰するような音を立てて氷が全部溶けた。
「あー、冷たかった……」
「ニャン」
「よしよしプリン……」
「ニャァァ」
プリンは気持ちよさそうな鳴き声を上げて俺の腕の中で目を細める。
今、冷えた俺の身体を暖めてくれるのはこいつだけだよ……
「……はぁ」
「とにかく!大人しく家で留守番しててね!」
「……説教乙」
ぷくくっとミイが笑いを堪えて俺のことを見てきた。
なんて…なんて屈辱!!
「ち、ちきしょぉ!覚えてやがれ!」
世紀末魔王とは微塵たりとも思えない陳腐なセリフを吐いて、俺はプリン一緒に家への道へ走り去っていった。
「……レン君結構落ち込んでたね」
「そうかな?」
「昨日なんて口を開けば冗談か訳の分からないことばっかり言ってたじゃない」
例えば、ぷぎぃぃっ!やファンタジィィッ!や巨乳最高!などである。
「あれはただの変態なのよ、多分」
ミイは変態との同居生活を考えるとまた、憂鬱な気分になってしまった。