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「あの時は呆気なく負けてしまいましたけど、今は負けませんわよ」
「ほう、ユウに修行をつけてもらって更に強くなったみたいだな」
私は横目で柊菜を見る。 前に比べ、彼女の周囲に浮かんでいる『紫電』の顕現前の状態が良い。魔力の供給量や柊菜自身の剣技と腕前が上がったからだろう。
「どうしてあの方はあそこまでの強さを?
私達以外の剣技使いがいたというのでも驚きですのに、あの強さはシルヴィア様でも敵うかどうか……」
「ユウはこの世界の人間じゃない。
……そろそろしておこうと思ってたところだ。私のことと彼のこと、柊菜には教えておく」
柊菜は真剣な面立ちで頷くと私の方へと身体を向けてイスに腰掛けた。
まずこの世界とは別次元にあるイノセントという世界のこと。そして私はシードの統治機関の実験によって生まれてすぐにイノセントへ意識、または魔力的なものを転移されていたことを伝えた。
「そんな……あの白い箱の中では人体実験が行われていたなんて……驚きですわ」
「調査中だから詳しくは分かっていないが、まだあの白い箱の中には、私の行われた実験のデータが残っているはずだと超科学研究所のレストルト博士に教えてもらった」
ついこの前のことだ、この世界でもっとも著名な博士の元へ私は別次元に転移したことがあると言うと、全てを納得したかのように教えてくれた。
詳しいことは他言できないからといって、手に入ったのは今の情報のみだったが。
「で、イノセントで共に行動していた最強の勇者であるユウが姿を変え、この世界に転移してきたということさ」
「だからあんなに強いのですね……
納得いたしましたわ」
柊菜は私の突飛な話を疑うことなく素直に信じる。
彼女はなかなかの人見知りであるため、ユウと初めてあった時のように他人を認めるのに時間がかかる。
ま、仲良くなってしまえば素直で可愛い奴なのだが。
「もし私が手伝えることがおありなら尋ねて下さいね、できることなら何でもしますので」
「ありがとう、その時はよろしく頼むよ」
私は柊菜に笑いかける。
やっぱり彼女は良い子だ。