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第十高等学校
「それじゃ今日の魔法学はここまで。
そのままホームルームするわよー」
「先生!」
「何ですかアクセル君?」
「明日から始まる『夏休み』とは一体何ぞやですか!」
「え?知らないの?」
「はい!」
「はは、嘘だぁー」
「初めて見たよ夏休み知らない人なんて」
「魔王は年中無休でしたので!」
俺はいたって大真面目である。
夏休み?何だそれは。夏に休みがあるのかね。
学校の休みは日曜くらいだろ?
「無駄な紙の束を渡されて惰眠を貪るための時間のことよ」
「マジかよ、パラダイスかよ」
「ちょっとレストルトさん!
夏休みっていうのは学生に与えられる長期休暇のこと。 代わりに夏休みの宿題もあるけどね」
なるほど、だから最近教師達が夏休みだからな、といって宿題を無駄に出してきたのか。
「了解です」
「それじゃあホームルームするわねー」
俺が納得したのでシルヴィア先生はホームルームを開始した。
「ぐふふ……夏休みか…」
「どうした上田君、頭に虫でも湧いたのかね?」
「湧いてねぇよ!しかも安田だよ!
アクセル、お前夏休み知らないってことは夏の本当の楽しみを知らないってことだよな」
上田君、何故そこまで鼻の下を伸ばしているのだ。
クラスで地味に絡みが多い男子がこの上田君だ。なぜなら俺たちの思考は似ているからだ。
故に女子から嫌われてる男子ナンバーワンも上田君である。
「前田氏、夏休みの楽しみ方とは何でござるか」
「それはだな……『海』『水着』『プール』『祭り』このワードさ」
「なんと…! 夏休みは海…」
デスパイアの海は魔物が多いから基本的に誰も入らない。
漁をするのなら別だが。
水着なら見たぞ俺は。 下着かと最初は思ったぜ……興奮した。
「とりあえずは『海』か『プール』に行ってこい……そして『水着』を堪能するんだ……祭りは夏休み明けにあるのでいい……」
「上田君、何故小声なのだ」
「くく……良いな? 今年に海の良さを堪能したら来年俺も連れいけ」
了解した。
俺は頷くと上田君と拳をぶつけ合う。
そして俺はチャイムが鳴ると同時に校門へと走り出した。