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北の街〈エスト〉
「うーん……身分が証明できないんじゃあねぇ……」
「そこを何とか!」
「ごめんなさいね」
……これで5件目だ。
「ん?どうだったユウ?」
「……またダメだったよ」
僕はため息をつく。
神無の家で引きこもっているだけじゃダメだ、と思った僕は仕事を探すために家の近くにある街〈エスト〉へと来ていた。
が、どの店に頼みこんでも身分が証明できなかったので断られていた。
店の前で待っていてくれた神無と刀音が僕の元へやってくる。
「ふむ……なら私の知り合いに頼んでみようか」
「ほ、本当に!?」
「あぁ、金なら腐るくらいあると良く言ってるからな」
「……まさかの大富豪とかじゃないよね」
「それは行ってからのお楽しみだ」
神無はポケットからケータイという連絡手段を使って何処かへ連絡を始める。
「お兄ちゃん!このパンすっごい美味しい!」
「刀音……また食べるんだね」
この子、常に食べ物を持っている気がするんだけど。