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「『魔物』って知ってるか?」
急に話題を変えた俺に、ミイは自慢気に答えを返して来た。
「知ってるわよ。
1000年以上前にシードに存在した化け物でしょう?」
「教科書通りの説明だな」
俺はたまたま近くの本棚にあった教科書を広げてミイに見せる。
「シードでは絶滅した、とされているが、デスパイアでは魔物の数は人と1:1の割で存在した。
教科書には魔物がいたとしか記されていないが、魔物の強さは人間の比じゃない」
昔、未熟な時に闘った魔物の強さを思い出す。
尋常じゃない魔力量、下手な魔法じゃ傷もつかない身体……
「シードで何故魔物が絶滅したのかは考えてみたが、全然解明できなかったから言うのはやめとくぞ。
その魔物がデスパイアを支配…というより荒廃させていたんだ」
シードにおける魔物絶滅の理由は、手掛かりが少な過ぎて全くわからない。 過去の文献にも記されていなかった。
「もしかして……デスパイアっていうのは『魔物と人間が対立していた世界』ってこと? それも魔物の方が優勢な」
「正解だ、頭良いじゃねぇか。
その頃は戦争ばかりしていて、人口の計算なんてろくにしてなかったからな、人間は滅亡寸前だった、とも言われている」
人間は魔法を駆使して魔物と闘っていたが、それでも魔物の強さには勝てずにいた。
勇者、などという存在もいることにはいたのだが、そいつらがどう足掻こうともはや無理ゲー。魔物の支配率はドンドン増えていった。