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突然の出会いから、一夜が明けた。
幸いにして、八見が一人暮らしを始めるときに餞別代わりにと、幼なじみのお嬢様が用意してくれてこの家は、一人だとどうやっても使い切れないぐらいに部屋は余っていた。
同居人が三人増えたぐらいが逆に、寂しさを感じずに丁度良かった。
「おはようございます」
リビングのドアを開けながら、八見は朝の挨拶を口にした。
でも、昨日まで一人暮らしだったから、朝の挨拶一つするだけでも、違和感がぬぐえない。
「応、おはよう、親父殿。申し訳ないのだが、朝練の後、シャワーを浴びさ……」
ドアを開けた瞬間、スレンダーな美少女が全裸で立っていた。
条件反射で、ドアを閉じてしまったけど、もう遅い。
健全な青少年である八見の脳裏には、今見た光景がしっかりと焼き付いている。
(昨日、触った時にも感じたけど、やっぱりスカイさんの胸の大きさは異常だよ。それにそこから連なる腰のくびれなんて、もう抱きしめたら折れてしまいそうなぐらい細くて………)
「おはようございます、お父様」
「のわぁつ!」
いつの間に現れたのか、メイド服姿の銀髪ツインテール少女が目と鼻の先に立って、彼を見ていた。
(………それに命さんは、無表情な上に、たまにこうして気配を消して近づいてくる事があって、少しばかり心臓に悪いよ。)
「………おはようございます、お父様」
っと、驚きのあまり高鳴っている心臓を抑えていると、もう一度朝の挨拶をしてきた。
「おはようございます、命さん」
返事をしても命は相変わらずの無表情だった。
一度小さく頷くと、銀髪ツインテールの彼女は、八見の横をすり抜けてリビングへと入っていく。
(って、ちょっと待ってよ、命さん。今、リビングには全裸のスカイさんが………いなかった)
見れば、スカイは、いつもの銀縁眼鏡を掛け、バスタオルを胸に巻き付け、ソファーに座りながら豪快に牛乳を飲んでいる。
その格好も、特にバスタオルで隠しきれていない胸の谷間とか、結構刺激的だけど、目のやり場の無い、全裸に比べたら数倍マシだった。
「あ、おはよ~~~、パパ~~~」
「おはよう、紫さん。朝から元気が良いね」
「もちろんだよ~~~。今日も元気一杯に頑張っていくからね~~~」
朝一からエンジン全開ハイテンションな声はテレビの前から聞こえてきた。
テレビに写しだされているのは、ただいま人気急上昇アイドル、小野一美。
彼女のPV映像が流れていて、曲に合わせながら、紫が一美本人と見間違うぐらい完璧に踊りを合わせていた。