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「パパ~~~~!」
堅苦しいホールルームが終わった瞬間、“パパに向かってダイブ!”って、勢いで駆けだした紫だったが、既に八見の周りは色んな人が詰め寄っていて、紫が入り込む余裕なんて何処にも無かった。
「すごいぃ~~~、パパってあんなに人気者だったんだねぇ~~~」
パコっ!
「つぅぅぅぅ。もう、痛いじゃない、お空ちゃん。どうして、紫の頭をいきなり叩くの?」
「親父殿が、あのように詰め寄られているのは、紫殿の発言が原因であろう。いずれはばれることござったが、事情を説明せずにいきなりパパなどと呼んでしまえば、皆、混乱するでござるよ」
「え~~。でも、パパは紫のパパだから、間違っていないんだよ」
「………言っても、通じないみたいです」
「そのようでござるな、命殿。でも、紫殿のそのように包み隠すことなく真実を口に出来る所、拙者は嫌いではないでござるよ」
スカイはそう言って、紫の頭を撫でていく。
紫は、ちょっとくすぐったそうに栗色の瞳を細めている。
気持ちよすぎて思わず、「にゃ~~」とか言ってしまいそなぐらいだった。
「三人とも、和んでいる所、ちょっと良いかな?」
(あ、この声は!)
細められていた紫の目が、一瞬で見開かれる。
小犬のような栗色の瞳が映し出しているのは、手足が長く均整の取れたプロモーションに、誰かららも好まれそうな愛らしい顔つきをした美少女だった。
「………あなたは、今人気急上昇中、人気アイドルの小野一美様?」
「そうだよ。自分で、人気アイドルなんて言うのは、恥ずかしいけど、私が小野一美よ」
それは、今朝見ていたシングル初回特典DVDで見るよりも何倍も可愛らしい笑顔だった。
(………でも、何か違う気がする。こんなの紫の知っている笑顔じゃない。紫が好きなのは、もっと、こう心の底から楽しんでいるっていうのかな………こんなの違うよ)
でも、紫はその違和感を、上手く言葉に出来ないでいた。
「でも、アイドルである前に、私は学生で、あなた達のクラスメートよ。一応、クラス委員もやっているから、分からないことがなんなりと、私に聞いてきてね」
そう言って、紫達に左手を差し出してきた。
確かに難しい事は分からないし、違和感はぬぐえない、でも、今はそれよりも、こうして会えたことを喜んだ方が良いに決まっている。
紫も笑顔で左手を差し出して、
「うん。これから、パパと一緒に子作り頑張って、紫を産んでだよ、ママ!」
相も変わらず、クラス中を壮絶とされる爆弾発言をしたのだった。




