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運命の糸  作者:
2/10

野球少年と天然少女

美樹

私は、歩きながら耳を貫くような音を聞きました。鉄と鉄がぶつかったような。何の音だろう。音のする方はとても騒がしくお祭りでもやっているのかと思いました。しかし、屋台は1つも見つかりません。いったい何があったのでしょう。歓声のする方へ急ぎます。

 もしかしたら、重大な事件が起こったのかもしれません。もしそうなら、小説のネタとして使うしかないでしょう。走れ、私!事件は待ってくれません。学校のカバンを肩にかけ直し、太宰治の『走れメロス』を思い出しながらただがむしゃらに走りました。速くいかなくては、無二の友人小説のネタが待っています。急ぐのです美樹。


ちょうどその時俺もがむしゃらになって走っていました。やっと2塁を走り抜け後は3塁とホームベースだ。走れ、俺!ボールは待ってくれないぞ。外野の状況を横目で確認し、3塁へとぐ。こんな風にがむしゃらに走っている人の話を去年国語の授業で習ったような気がする。なんだっけ。そう。『走れメロス』だ。今の俺は主人公のメロスだ。ゴールにつけばあの子が来てくれているはず。今は頭の中になぜあの子が出てくるのかを考える余裕なんてない。3塁からホームベースまであと少し。ボールは今3塁へ向かっている。急がないと点数が。プライドが。あの子が。

えっ?あの子?不思議に思いながらギリギリでホームへたどり着くことができた。滑り込みセーフ。歓声が遠くで聞こえる。あれ。おかしいな。今なぜかそんなことよりあの子がすごい形相でこっちを見ていることの方に神経が行く。あまりにあの子の形相が面白いので「ばーか」。大声で言ってやった。なのに、その子は首をかしげるばかり。代わりにその子近くにいた女子どもが騒ぐばかり。

ちげぇよ。お前らに言っている訳じゃないよ。と心の中で舌打ちをしてベンチに戻った。


美樹

私は驚きました。あの音の正体が野球から発された音だとは。どうしたらあんな音が出るのでしょう。何物にも汚されていないような。耳を貫くあのきれいな音が。すごいなぁと感心していると、興奮が抑えきれません。きっと私はおかしな顔をしていたことでしょう。

それに気付いたのか昨日の男の子が大声でこちらに向かって何か言いました。私はその言葉の意味が分かりません。男の子、確か晶さんと言いましたか。晶さんがそれを言うと目の前に座っている女の子たちが騒ぎだしました。なんでバカと言われて歓声を上げるのでしょう。私は不思議で首を傾けました。立ちながら「考える人」になったようです。私は考えて考えましたがやっぱりわからなかったので諦めました。帰ってから調べたいけどなんて調べればいいのでしょう。「バカと言われて喜ぶ人」とパソコンで調べたら出てくるのでしょうか。こうなったら徹底的に調べよう。私は拳を握り空に高く上げました。

気づいた時には周りの人たちが怪しい目でこちらを見ていました。ん?私に何かついているのかと常に持ち歩いている鏡を取り出して見ますが何もついていません。おかしいな。ま、いいや。私は今日疑問に思った事をまとめて家に帰ることにしました。小説のため野球観察もいいですがまずはルールを知らないと始まりません。帰って野球のルールと「バカと言われて喜ぶ人」の心理を暴かなくては。私は拳をまた振り上げながら家へダッシュです。


ベンチからあの子を見ていると考える人になったりいきなり拳を振り上げたりしていました。女心は分かってきたつもりだったがあの子は例外である。何一つとしてわからない。不思議で…面白い子だな。と思っているとまた拳を天にかざし走って行ってしまった。え。見に来てくれていたのではないのか?なんだか追いかけたくなる衝動に落ちいってまった。今追いかけないともう二度と会えないような気がしたからだ。

「コーチ!体調が悪いので帰ります!」そう言いあの子の方へ駈け出した。コーチは「どこが体調悪いんだ!早く帰ってこい。こらー!」と怒っていたが無視。女どもの視線も無視。今の俺にはあの子しかいない。県内トップの走りで追いついてやる。あの子は数十メートル先にいた。あと少し。あと…。ん?この子はどこに向かっているんだ?



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