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第三話 「お前バカか?」

長塚が転校して来てから二週間ほどが経った。

長塚もクラスに馴染んで特にこれといって問題はない。

クラスの奴らも長塚を受け入れている様子だ。

そういう俺も長塚の存在に慣れつつある。

「おはよう!」

「おはよ」

今では朝での挨拶も普通にできる。

まぁ挨拶なんてできない方がおかしいんだけど…

「今日も早いね」

「お前に言われたくねぇよ」

こんな軽口も言えるぜ!

「ほらほら和也君、今日こそは私とお話ししよう」

「は? 話しなら毎朝してる気がするんだけど」

長塚の奴この歳でぼけたか。

「和也君いつもああとか、うんとか、そうだねとか相槌ばっかりじゃない」

「そんなこと…」

ないとも言い切れない自分がいる。

「だからたまには和也君から何か話題だしてよ」

「そんなこと言われてもな…」

俺は基本聞き手だし、何かを話すにしても何かしら話題がないと何を話せばいいかよくわからない。

だから自分から話題をだせと言われてもどうすればいいかわからない。

ホントに俺って…

「ほれほれ私に聞きたいこととかでもいいからさ」

「ん…」

聞きたいことか…そうだな。

「そういやずっと前から気になってたことがあるんだ」

「何々? 何でも聞いて」

「すっかり聞くの忘れてたんだけどさ、何で長塚こんなに早く学校に来てるんだ?」

「え? 聞きたいことってそれ?」

「そうだよ。確か最初は時間見間違えたんだよな?」

「そうだけど」

「それはいいんだよ。誰だってミスすることはある。でもそれから毎日この時間に来るのがわからん。ありえないとは思うが毎日時間を見間違えたりしてるのか?」

だとしたら長塚は悪い意味ですごいと思う。

「いくらなんでもそれはないよ」

「なら何でこんな時間に来るんだよ?」

「そんなの決まってるよ!」

「?」

「和也君とお話ししたいからに決まってるでしょ!」

「…………」

何言ってんだこいつ

「その何言ってんだこいつっていう目やめてくれない?」

「お前バカか?」

「む。失礼なこと言わないでよ。私それなりに成績いいんだよ」

「いやそういう意味じゃなくて」

「大体そんなにおかしなことかな?」

「おかしいにもほどがある。何で俺? 吉田とかならまだわかるが」

「真理ちゃんとお話しするのも好きだけど、和也君とお話しするのも楽しいよ」

「本当によくわかんない奴だな。俺なんかと話して何が楽しいんだか」

「そうかな? 和也君って面白いじゃん」

「俺からしたら長塚の方が断然面白いわ」

「そ、そうかな。なんか照れるな。えへへ」

「何で照れるんだよ! 面白いって言われて照れる奴初めて見たわ! 大体褒めてすらないからな」

長塚と話すとホント疲れる。

「ほらほら他にも何か質問ないの?」

「ない」

俺が聞きたかったのはこれだけだからな。

「ええーもっと私になんか聞いてよ。なんでも答えるよ」

「ないもんはない」

「ちぇー、いいもんなら私が和也君に質問するもん」

「俺に?」

また面倒なことになってきたな。

「そっちだけ質問しといて私の聞きたいことは無視なんてずるいことはしないよね」

こいつ最初からこれが目的か。

しょうがない。

「何が聞きたい? 俺の答えられる範囲でなら答えてやるから」

「え? ホントにいいの?」

なんなんだこいつ自分から聞いておいて。

「聞きたいことがないなら無理に聞くことはないだろ」

「待って待って少しだけ考えさせて」

「言っておくけど質問は一回だけな」

「何で?」

「俺はお前に一回しか質問してないんだから長塚も俺に聞けることは一回だ」

「和也君ずるい!」

「お前にだけは言われたくないわ!」

はぁ早く吉田来てくれないかな。

「ならとりあえずとっておくよ」

「は?」

何を言ってるんだ長塚は?

「だから今は質問しない。そのうち質問するからその時に和也君、ちゃんと答えてね」

「やっぱりお前の方がずるいわ!!」



━━━━━━━━━━━━━━━━━



今現在授業中。

科目は国語、教師は田中先生。

今思えば俺も地味に嫌なことをやってしまったと反省はしている。

ついカッとなってやってしまった。

だが後悔はしていない。

あの時俺がやったことは正しかったと少しばかり思っていたりする。

田中先生の靴に入れた画鋲がどうなったかは知らない。

てかもう興味ない。

今俺は反省の意味を込めて今回は少し真面目に授業を受けている。

「つまりこの作者の伝えたいこととは」

今回は真面目にしているが次回からはいつも通りにしよう

はっきり言って疲れるからな

「次にこの…」


キーンコーンカーンコーン


「っと今日はここまで」

ざまぁ。チャイムに授業邪魔されてやんの。

「宮野あとでノートを集めて俺のところに持ってきてくれ」

罰が当たった。

というか何であとでなんだよ。

今でいいじゃん。

今ノート集めた方が絶対にいいじゃん!

「はい号令」

「起立、礼!」

嫌がらせか!嫌がらせなのか!?

やはり田中を許すわけにはいけないようだ。



「はぁめんどくさ…」

ていうか重い!

このノートたち重い!

正直一人でこれを職員室まで持っていくのはきついかもしれん。

田中めこれをわかっていてわざと俺に。

俺の中でどんどん田中への恨みが膨れ上がっていく気がする。

「宮野君大丈夫?」

「え? ああまぁ」

俺に声をかけてきたのは吉田だった。

一時期俺の中で神として崇められていたことのある吉田様が一体俺に何の用だ?

てか用があるなら早くしてほしい腕がきつい。

「ノート運ぶの手伝いましょうか?」

「は?」

いきなり手伝うとか言うもんだから驚いた。

でもよくよく考えてみると吉田は人が困っていたりするとよく声をかけたりすることが多いので今回もそんな感じだろう。

「いやいいよ。大丈夫問題ない」

「いいからノート半分貸してください」

吉田は俺からほとんど無理矢理な形でノートの半分を持ってくれた。

「ほら職員室に行きましょう」

「あ、ああ」

吉田の言うとおりさっさと行くことにしよう。


気まずい。

さっきからずっと無言だ。

こんなのとならやっぱり一人で運んだ方が気が楽だったと思う。

「あの…」

「何?」

吉田の方から俺に話しかけてきた。

「えっと、その…」

「?」

何か言おうとしたが何を話せばいいかわからない様子。

どうやら吉田もこの気まずい空気が嫌らしい。

「あ、そうだ。宮野君ってさ有希ちゃんと仲いいですよね」

「えっとさ、有希って誰?」

おそらくはクラスの誰かだろうが、残念ながら俺はクラスメートの苗字ならともかく名前はわからない。

「長塚有希ちゃんのこと。いつも朝二人で喋ってるじゃないですか」

どうやら有希とは長塚のことらしい。

「朝は二人しかいないから喋ってるだけで別に仲がいいわけじゃないと思うよ」

「嘘。宮野君ってあんまりクラスの子と話したりしないじゃないですか。普段なら二人きりでも気にせず一人で本読んでるのに有希ちゃんとはよく話してるでしょ」

それは長塚が俺にかまってくるだけです。

そんなことを言ったところで吉田が信じるとも思えない。

「それに有希ちゃんと話してるとよく宮野君の名前が有希ちゃんの口から出てきますよ」

待て待て待てあいつは一体何を話してるんだ?

変なことを吹き込んだりしてなきゃいいが

「和也君って本当は面白いんだよ。とかよく聞きます」

あいつはホントに何を…

「それに有希ちゃん転校してきたばかりなのに宮野君のこと名前で呼んでるじゃないですか」

「それなら吉田だって名前で呼ばれてるだろ」

「そりゃ私は女の子ですから、男子で名前呼ばれてるの宮野君だけだと思います」

「どうだかな」

長塚って何考えてるかよくわからないんだよな。

「あ、着きましたよ」


ガラッ


「失礼します」

田中はどこだ?

「田中先生ノート持ってきました」

どうやら吉田が田中を見つけてくれたらしい。

「おう、宮野お疲れ。吉田は宮野の手伝いか? 偉いな」

「いえ、私が勝手に手伝っただけですし」

「じゃあ先生失礼します」

さっさと教室に戻るかな。


「吉田手伝ってくれてありがとう」

教室に着いたので吉田にお礼を言っておく。

「どういたしまして」

「む、和也君。真理ちゃんにデレデレしてない?」

「デレデレって表現この場では使わんだろうお礼言っただけだし。てかいきなり現れるな。心臓に悪い」

ここで長塚の登場。

気配もなく表れたので少しばかり驚いた。

「そんな照れなくてもいいのに」

「ちょっと待った。なんか会話になってないぞ」

「ごまかさないで!」

「何をだよ! ていうか会話になってないって言ってるだろ」

「………」

なんか吉田がポカンとしてる気がする。

「ね! だから言ったでしょ。和也君は面白いって」

「ふふ。そうね」

はぁホント疲れた。

席に戻ろ。

「あれ? 和也君どこ行くの?」

「どこって自分の席に戻るんだよ」

「もっと喋ろうよ」

「無理、疲れた」

「ちぇーケチ」

「ケチで結構」

長塚と話すと体力がごっそりと持っていかれるわ…



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