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第二十話「…うん、まぁ。そんなんでいいならいいけど」

「はい。そこまで~」

教師がそういうと同時にクラスの奴らは皆、伸びをしたり、周りとできはどうだったかなど話をし始めた。

これでテストは全て終わり後は結果を待つだけとなる。

終わったと喜んでいる奴もいれば、いろんな意味で終わったと項垂れている奴もいる。

俺は特に問題はなく、むしろ普段より点数は良いかもしれない。

これも吉田先生のおかげだろう。

勉強会はテスト前日になるまでずっと俺の家でやった。

吉田に「明日も宮野君の家でいいですか?」と聞かれて無言で頷くしかできなかったのだ。

だって断って吉田を怒らせ、また吉田verヤンデレになったりしたらと思うと…。

あの日の悲劇は俺と有希と翔太の三人の胸の内に封印しようと三人で決めた。もう二度とあんなことが起きたりしなければいいが。

そんな恐ろしいこともあったが、勉強会自体はそれなりに有意義でもあった。

そもそも勉強会は翔太の赤点回避のために開いたのだが、結果としては俺も色々と吉田に教わったりしたおかげで今回のテストの成績は上がりそうだ。

実際のところ俺は勉強会で勉強する気はなく、落書きしたり翔太がちゃんとできてるか観察したりしてばっかだったのだが、勉強を全くしてない俺に気付いた吉田に無理矢理勉強をさせられたのだ。

まぁそのおかげで今回のできは上々なわけだが。

とにかく、それぐらい吉田の勉強の教え方は解りやすかったというわけだ。

これなら翔太の方も赤点を取らずに済むかもしれないな。

そんなことを思いながら帰る準備をしていると、

「ねぇねぇ、和也君」

有希が俺のとこに寄ってきた。

今は普段の席ではなく出席番号順での座席となっているため、有希とは席が離れている。

「どうした? なんか用か?」

「テストどうだった? よくできた?」

「普段よりは良かったと思うけど」

「そっか。だったらさ、勝負しない?」

有希は怪しげな笑みを浮かべながらそんなことを言い出した。

「勝負ってテストの点数でか?」

「うん。そう」

勝負ねぇ。何を企んでるんだこいつは? いや、普通に考えればただ点数を競いたいだけだろう。こういうことをする奴らはたくさんいるだろうし。

でも有希の場合は何かしら企んでるようにしか思えない。何も考えずに勝負をしたら絶対に後悔することになる。

「点数を競うだけか?」

「勝ったら負けた方に一つ何でも命令できるっていう罰ゲーム付きで!」

なるほどそれが目的か。…さてどうするか? 有希って結構頭いいらしいんだよな。今回はそれなりに問題が解けたからって絶対に有希に勝てる保証はないし。

「ちなみに有希が勝ったら俺にどんな命令をするつもりだ?」

「内緒!」

負けたらどんなことをさせられるか分からない…か。さすがにこの勝負に乗るのは危険か。

「勝負はやめとく」

「ええ~。何で?」

「負けて変なことさせられるの嫌だし」

「ふーん。私に勝てる自信ないんだ」

有希のその挑発的な言い方に少しばかりカチンと来てしまった。

「誰もそんなことは言ってないだろ。勝てなくはないだろうけど絶対にとは言い切れないからやらないんだ」

「でも結局それって私に勝つ自信がないってことじゃない?」

「…わかった。やってやるよ。負けても後悔すんなよ」

よく考えてみれば今回のテストはそれなりによくできていたし、勉強会での有希の様子を思い出したら勝てる気がしてきた。

勉強会で有希は一人だけまったく勉強をしていなかった。

吉田は有希には甘く、俺には勉強しろと叱ったのにずっと落書きをしている有希には何の注意もしなかった。しかも気が付くと有希はリビングから居なくなっており、最初はトイレにでも行ってるのかと気にしていなかったがいつになっても戻ってこないので、一旦勉強を中止し家の中を捜索すると有希は勝手に俺の部屋に入っていて、しかも俺のベットで寝ていた。ぐっすりと寝ている有希の寝顔を見てるとどうにも怒る気にはなれなかったので、とりあえず叩き起こして勝手に俺の部屋に入るなと注意だけしておいた。その翌日の勉強会でも有希は途中で居なくなっており、どうせまた俺の部屋だろうと思いつつ行ってみると案の定有希は俺の部屋に居た。しかも今度は俺のベットの上で横になりながらマンガを読んでいた。その次も、そのまた次の日も有希はそんな調子だった。

「早くテストが返ってこないかな~」

俺が勝負を承諾すると、有希は機嫌を良さそうにしながら自分の席に戻って行った。

…何か俺、有希に上手く乗せられたような気がするんだけど気のせいだよな。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



それから数日が経ち、テスト返却日。

返されたテストを見て喜ぶ者もいれば落ち込んだり、真っ白になっている奴が続出している。

俺は返されたテストを見ながら、有希との勝負のことについて考えていた。

確かに全体的にいつもよりは点数は高い。でも勝てる気がしない。あくまで予想だが負ける気がする。

俺のこういう時の予想は大概当たる。

今になって何で勝負受けちゃったんだろうと後悔している。

「さぁ、和也君! 勝負だよ!」

俺の前の席に座っている有希がこちらを向いてきた。

「せ~のっ!!」

有希がテストこちらに見せてきたので、俺も有希に自分のテストを見せた。

俺は、ほとんどが八十点代。数学と理科は九十点代を取れたが、地理が七十点代。

対して有希は、ほとんどが九十点代。地理だけが八十点代だ。

ほらな、やっぱり負けた。

「私の勝ちだよね?」

「見るからにそうだろ」

「やったー!」

勝った有希は嬉しそうにしている。

「はぁ、勉強会じゃまったく勉強してなかったのに何で勝てるんだよ」

「え? だって私ちゃんと家では勉強はしたもん」

どうやら俺は有希を甘く見ていたらしい。有希は家では勉強とかはまったくしないような奴だと思ってたんだけど、ちゃんと勉強してたんだな。

「二人とも何してるんですか?」

俺と有希で話していたら隣の吉田が俺たちの様子を見て、なにをしているのかと聞いてきた。

「テストの点数で勝負をしてたんだ。そういえば真理ちゃんはテストどうだった?」

「私? こんな感じ」

吉田が自分のテストを見せてきてくれたので、俺と有希で見てみると。

「「………」」

吉田もほとんどが九十点代で、国語と地理と数学は満点。

「凄いね。真理ちゃん」

「そ、そうかな? でも今回はよくできたかなとは思うよ」

テストで満点取る奴とかホントにいるんだ。

「あ、そういえば本多君はテスト大丈夫だったんでしょうか?」

「翔太? どうだろうな。まぁそのうち連絡は来るだろ」

翔太のことだ。おそらくは結果が良くても、悪くてもテストが返ってきたらすぐに報告が来るだろう。

「ところで和也君。罰ゲームのことなんだけど」

「ああ。もうなんだって来い」

なんだって来い言いつつ、内心では簡単なのが来ますようにと祈っておく。

「あ、やっぱり宮野君が負けたんですね」

「やっぱりって何だよ」

「いえ、別に」

吉田はクスクスと笑っている。

「で、俺に何をさせるんだ?」

「何かをしてほしいとかって命令じゃないんだよね」

「? じゃあなんだよ?」

「あのね、もうすぐ夏休みでしょ。だから…ね」

「何だよ? はっきり言え」

「うん。えっと、夏休みに私の誘いを用事があるとか以外で断るのは禁止!」

…どういうことだ?

俺がいまいち理解してないのに気が付いたのか、有希はどういうことなのか説明をしてくれた。

「和也君ってさ、夏休み中に私が遊びに誘っても絶対暑いからやだとか言って断るでしょ」

有希の言うとおりに断ると思う。てか去年の夏休みに、翔太にどっかに行こうと誘われたが暑いからやだと断った記憶がある。

「だからそういう理由で断るのは禁止。何かちゃんと用事があるなら仕方ないけど」

「…うん、まぁ。そんなんでいいならいいけど」

少し拍子抜けした。俺はてっきり校庭を有希がokと言うまで走り続けろとかそんな命令が来るかとばかり思っていた。

「でも遊びに誘うなら俺じゃなくて吉田とかでいいだろ」

何で俺を遊びに誘うのかが分からない。

「いいでしょ! 和也君とも遊びたいの!」

何故か有希に怒鳴られた。

「宮野君。あなたって人は…」

隣を見ると吉田が俺を呆れたような目で見ていた。

「何だよ?」

「いえ、別に…。はぁ」

わざとらしくため息までしやがった。

ホントに何なんだ? 言いたいことがあるならはっきり言えばいいのに。

…でもまぁ、別にどうでもいっか。気にしててもしょうがないし。

そんなことよりもう少しで夏休み。さっさと休みにならないかぁ。



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