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第十八話「包丁ならキッチンに行けばあるから!」

「あ、もうこんな時間か。俺そろそろ帰るわ」

翔太が時間を見て帰ると言い出した。

「それなら私たちも帰ろっかな」

「うん。そうだね」

有希と吉田も帰るらしい。

「どうしたの和也君? 黙り込んじゃって。もしかして私たちが帰っちゃうと寂しい?」

有希がなんか言っているがそれはスルーして。

「あのさ…今日何でうちに集まったんだっけ?」

「勉強会するためでしょ」

有希は当たり前のような顔をして答えた。

「だよな。なのに今日うちで何してた?」

「えっと、色々やったよね。ゲームしたりトランプやったり、本多君の武勇伝聞かされたり」

翔太の武勇伝は正直どうでも話しばかりだったのだが、翔太がいつになっても語るのをやめずちょっとした罰ゲームみたいな感じになっていた。

「俺としてはまだまだ語りたりないけどな」

最終的には俺が翔太を殴って話を中断させた。

あのままだったらいつ終わるか分からなかったしな。

「今日は楽しかったね。また遊びに来たいよ」

「そうだな! また来ようぜ!」

勝ってにまた遊びに来ようと話し合う有希と翔太。

「勉強は!? これじゃあただ遊んでただけじゃん!」

「和也君。今日は勉強会という名目でただ遊びに来ただけだよ」

「騙したな!」

「ていうか、宮野君も普通に遊んでたじゃないですか。何を今更」

「俺は何度も、勉強いつやんだよって聞いたよね!?」

そのたびにこの後やるとか言ってたのに。

「いいですか宮野君。聞くだけじゃだめなんですよ。ちゃんと実行しないと」

「吉田さんの言うとおりだな。和也が勉強始めてれば、俺たちもやり始めただろうし」

俺が悪いのか? いやいや、どう考えたって俺は悪くないだろ。

「とりあえず本当の勉強会は明日ってことで」

有希が両手を合わせながらそう提案してきた。

「「賛成!」」

ホントにする気あんのかな?

「ってか、またうちに来る気か!?」

「当たり前じゃないですか。それとも他にいい場所でもあるんですか?」

「翔太の家とか」

「ああ、俺ん家は明日無理だわ。なんか母さんに客が来るらしい」

だったら有希の家でと思いつつ有希の方を見ると、

「わ、私の家も無理かな。…何となく」

「絶対無理じゃないだろ! 大丈夫だろ!」

思いっきり嘘ついてるようにしか見えない。

「ほ、ほんとに無理なんだよ。…多分」

「何となくとか多分とか小さい声で呟いてるけど、全部聞こえてるからな」

「うぅ。助けて真理ちゃん!」

あ、こいつ吉田に助け求めやがった。

俺が吉田の方に視線を向けると、

「宮野君…」

ものすごい軽蔑の眼差しを向けられていた。

「俺何かした!?」

「有希ちゃんが嫌がってるのに、あなたはそんなに女の子の家に行きたいんですか?」

「え、いや。そうじゃなくて…」

有希が吉田に助けを求めたんなら、俺は翔太を味方につけるか。

「翔太からも何とか言ってくれ!」

「わかってる。わかってるから大丈夫だ」

おお! わかってくれたか!

「和也も男だもんな。女の子の家に行きたいと思うことぐらいあるさ!」

違うわ! そうじゃない! え? もしかしてこの場に俺の味方っていない?

「でもさ、長塚さんも嫌がってるしさここは諦めよう。な? 和也」

翔太の奴まで敵につきやがった。ていうか最初からこいつも敵か!

「ならもう吉田の家でどうだ!」

「宮野君あなたは女子の家なら誰の家でも構わないというんですね」

「だから何でそうなる!?」

これはもうちょっとしたいじめじゃないか?

「そんなに宮野君は自分の家が嫌ですか? 何かダメな理由があるならそれを言ってくれれば」

「ダメな理由とかは無いけど、うちに来たら絶対また勉強せずに遊ぶだろお前ら」

「宮野君はさっきの有希ちゃんの言葉聞いてなかったんですか?」

「どの言葉だよ?」

さっきのと言われてもどのことだかさっぱりわからない。

「有希ちゃん」

「とりあえず本当の勉強会は明日ってことで」

吉田に名前を呼ばれた有希は両手を合わせながらそう言った。

「ああ、それか。ていうかわざわざ再現しなくていいから」

「とにかく、そういうことですので明日はちゃんと勉強しますよ」

いまいち信用できない…

「なんですかその疑ったような目は…」

「いや、だって」

「わかりましたならばこうしましょう。もしも明日少しでも勉強せず遊んだりしたら」

吉田は一度目を閉じ、呼吸を整えた後、目をくわっ! と開き、

「衣類などは全て着ずに街中を三時間ほど歩きまわってやります! ………本多君が」

そう高らかに宣言した。

「って、ええ!? 俺が!?」

「当たり前です。本多君は女の子にそんなことさせるつもりですか?」

「だからって何で俺が!?」

「本多君は男の子ですから問題ないですよ」

きっぱりと笑顔で言い放つ吉田。

「問題大有りだよ!! んなことしたら俺、刑務所行きだよ!?」

「問題ないかと」

「酷い! この人悪魔だよ!」

翔太。その意見には賛成だ。最近の吉田はなんだか恐ろしいんだよな…これが本性か?

「悪魔だなんて女の子に失礼ですよ。ところで宮野君。包丁ってどこにありますか?」

「ごめんなさいでした!! 吉田さんは天使っす! 超女神っす!」

その時の翔太は凄かった。目にも止まらぬ速さで土下座をしたのだ。

「そんな、照れるからやめてください。それで宮野君。包丁はどこですか?」

「俺どう頑張っても刺されるの!?」

やばいよ。この人ホントに悪魔だよ。むしろ魔王でもいいんじゃないか?

「か、和也君。真理ちゃんがなんだか怖い」

有希が俺に近づき、俺の服の裾を掴んできた。

「き、奇遇だな。俺もそう思う」

この時の俺の声はものすごく震えてたと思う。

まさかクラスメートにここまで恐怖する日が来るとは。

「宮野君? 包丁はドコデスカ」

マジでやばいよ! この人病んでる、病んでるよ。

もう目が怖いもん! なんか少し笑った表情してるし。

「宮野君?」

「和也だめだ! 教えてはいけない!」

「包丁ならキッチンに行けばあるから!」

翔太が何か言っていたがそんなことを気にしてる場合じゃない。今の吉田に逆らったら殺される。

包丁の詳しい場所についてはあえて言わなかった。ちょっとした時間稼ぎ。今のうちに吉田を元に戻す方法を考える。

翔太の方を見ると土下座の姿勢のままブルブルと震えている。

こいつは戦力にならない。となると、

「有希。どうにか吉田を元に戻す方法はないか?」

もう頼れるのは有希しかいない。

この中で吉田と一番仲が良いのは有希だしな。

「え、えっと…どうしよう?」

「マジでどうにかしてくれ! じゃないとこの家で殺人が起こる!」

俺と有希で何かいい方法がないか話し合っていると、

「ミ~ヤ~ノ君」

吉田が帰ってきた。右手に包丁を装備して。

やばいやばいやばい! 何故か左手に鍋の蓋を装備してるけどそんなこと気にしてる場合じゃない!

このままでは翔太が! …いや翔太は別にいいか。このままではうちで殺人事件が起きてしまう!

「そういえば宮野君。私は魔王なんですか?」

「え?」

何を言って…

「さっき言ってたじゃないですか。この人ホントに悪魔だよ。むしろ魔王でもいいんじゃないか? って」

「こ、声に出してた?」

無言でうなずく吉田。

「ああ!? 和也君まで本多君みたいに震え始めた!」

終わった。俺人生はここで終了。自宅でクラスメートに刺されて死亡。

「和也君! 気を確かに!」

誰かの声が聞こえるな~。あはははははは。

「ま、真理ちゃん!」

有希が吉田の名前を呼ぶと、吉田が無言で有希の方を見た。

「え、えっと」

吉田の視線に怯みながらも有希は頑張り、

「今度駅前のクレープ奢るから落ち着いて!」

と言った。

「え! 本当ですか?」

しかも吉田は正気に戻った。

案外簡単なことで元に戻ったな。

「あれ? 何で私包丁と鍋の蓋なんて持ってるの?」

さっきまでのことを覚えてないだと!?

「ちょっとこれ、片付けてくるね」

吉田は包丁と鍋の蓋をキッチンに戻しに行った。

「た、助かった…」

本当に殺されるかと思った。

「和也君。大丈夫?」

「ああ、何とか。ホントありがと。お前命の恩人だわ」

今回のことに関してはマジで感謝だ。

「えへへ。どういたしまして」

そう言って、有希は嬉しそうに微笑んだ。


「包丁戻してきました」

しばらくして吉田がリビングに戻ってきた。

「あの、本多君どうしたんですか?」

翔太は未だに土下座のまま震えている。

「吉田。悪いんだけど翔太に声かけてやってくれるか?」

「わかりました」

吉田は翔太に近づき、

「本多君?」

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああっ!!!」

声をかけた瞬間大声を出して気絶した。

翔太。お前よっぽど怖かったんだな…

「ところで宮野君?」

「は、はい!」

吉田に声をかけられ、俺はついビクッとした。

まださっきの恐怖が忘れられない。

「明日の勉強会する場所どうします?」

「もう俺ん家でいいです!」

「え? いいんですか?」

「もちろん!」

さっきのことが怖すぎて俺しばらくの間吉田の言うことに逆らえないような気がするわぁ。

これからは吉田のことだけは絶対に怒らせないようにしようと誓った俺であった。



ちょっと吉田を暴走させすぎました。

何故こうなったorz


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