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第十五話「………そうだな、後は…ん?」

休みが明けて本日は学校。

だがその学校ももう少しで夏休みだ。

夏休み前にテストがあり、赤点を取ると夏休み中に補習に行かなければならないのだが俺は赤点を取るほど頭は悪くない。

だから何も問題はないのだが、

『和也助けて!!』

我が友の翔太はそうでもないようだ。

朝いつも通りの時間に学校に来たのだが今日は珍しく有希がまだ来ていない。

なのでラノベを読んでいたらいきなり翔太から電話が掛かってきた。

「なんで俺に頼むんだよ? 同じ学校の奴に頼め」

そう言って電話を切ろうとしたのだが。

『頼んだよ! 頼んだのによ~』

今度は愚痴をこぼし始めた。

『俺が頼んだらなんて言ったと思う?』

「知るか」

『「え? 本多に勉強を…無理でしょ」とか言われてさ!』

俺も無理だと思う。だって、

『しかも「本多じゃ誰に教わっても赤点回避は無理無理」とか言われたんだぜ!』

翔太は残念なほどにバカだ。

はっきり言って翔太が今の高校に通えてることに驚いているぐらいだ。

翔太の通っている高校は俺がいつも使っている駅からいくつかさきで、俺が通っている光坂高校よりも偏差値が低い。

最初は俺もレベルを下げて翔太と同じ高校に行こうかとも思ったのだが、受験で翔太は落ちて自分だけ受かるような気がしたのでやめた。

翔太に高校に受かったと聞いたときは何かの間違いじゃないかと思ったぐらいだ。

「お前今までのテストで赤点って何回取った?」

『ほとんど全部』

受験の時の裏口入学でもしたんじゃないかと思いたくなるな…

『なぁ、頼むよ。今度なんか奢るからさ~』

「わかったよ」

テスト勉強のついでに翔太に教えればいいだろ。

『マジで? 助かる!』

「で? いつやる?」

『今日からでいいか?』

「それは良いけどどこで勉強するんだ?」

『和也の家でいいんじゃないか?』

うちか…今日も母さんたちは仕事で遅くなるって言ってたし問題はないか。

「わかったそれでいい。」

『なら学校終わったらすぐ和也の学校に行くから待っててな』

翔太はそう言うと勝手に電話を切ってしまった。

…めんどくさいな。

今になって翔太に勉強を教えるのが面倒になってきた。


ガラッ


「和也君。おはようー」

やっぱり断ろうかと思っていたら有希がやってきた。

「おはよ。今日は珍しく俺より遅かったな」

「実は学校に来る途中に忘れ物に気づいてね。一度家に戻ってたんだ」

「忘れ物?」

「うん。秘密道具を家に忘れちゃって」

「秘密道具!?」

なんでそんな物持ってんだよ!?

てか学校に持ってくるな!

「間違えた。筆記用具忘れちゃって」

「筆記用具ね…」

ビックリしたな…こいつなら本気で秘密道具の一つや二つ持ってそうだから怖い。

「筆記用具を秘密道具と間違えるなんてホントだめだな~私。てへっ」

「お前わざとだろう! わざと間違えただろう!」

「そんなことないよ~。私って昔からドジなんだから…ホント和也君がいないと駄目だね私って」

「お前は一体何がしたい!? あとそのキャラやめろ!」

外の暑さにでもやられたか?

外は七月なだけあって結構暑い。今日は天気予報を見てないので何度かは知らないが。

「ふむ、このキャラは和也君のツボじゃなかったか」

「だから何がしたいんだ?」

「和也君はどういうキャラに萌えるのかなと思って」

何でこいつは毎回そういうことを思いつくのだろう?

「萌えってお前な…二次元ならともかく三次元で萌えるとか無理だろ」

「そうかな?」

「当たり前だ。たとえばリアルにドジっ娘とかいても迷惑なだけだろ」

水かけられたり、皿割ったり、プリントばら撒いたり他にも色々と…

「それによくリアルに妹がいる奴には妹属性はないとか言うだろ」

ちなみに俺は一人っ子なので姉も妹もいない。なので実は一度お兄ちゃんとか言われてみたかったりする。

「妹もだめか~。あとでやろうと思ったんだけど…」

…惜しいことをしたなんて思ってない! 思ってないぞ!

「じゃあ和也君は二次元でどういうキャラに萌える?」

「二次元で? そうだな……基本的には黒髪ロングとか好きだな。結構背が小さめのキャラとかも好きだ。最近は金髪ツインテールのロリっ娘とかいいと思い始めてるが。背が小さいとか胸が小さいとかを気にしてるキャラもいいんだよな。その辺を指摘すると涙目で「ちゃんと大きくなるんだもん!」とか言ってくれるとなお良し。俺には妹とかはいないからな一度でいいから「お兄ちゃん!」とか笑顔で言ってほしい。姉に「もう、しょうがないなぁ。私がいないとホントにだめなんだから」とか言われるのもいいな。幼馴染とかもいいよな。「昔から一緒にいたよね…これかも一緒にいたいな」みたいなセリフを言われてみたい。他にも………」


「………そうだな、後は…ん?」

…あれ? 俺どのくらい喋ってた?

「あ! やっと和也君が元に戻ってくれたよ~」

有希は半泣きになっていた。

「って! なんで泣いてんだよ!?」

「うぅ。だって和也君ずっと喋ってるし、私がどうしようって焦ってると「ちゃんと聞いてんのか!」って怒鳴るし…」

まったく覚えがないんだけど…

「それホントか? 嘘ついてんじゃないだろうな?」

「…ううぅ」

有希がマジ泣きしそうになった。どうやらホントらしい。

「わ、悪かったから泣かないでくれ。えっと、ほらハンカチ」

ハンカチを有希に渡す。

こんなところを誰かに見られたら…


ガラッ


教室のドアが開いた。

誰かはなんとなくわかる。黙ってドアの方を見ると、

「…有希ちゃん?」

案の定吉田が立っていた。

吉田は有希が泣いていることに驚いている。

「宮野君…有希ちゃんに何したんですか?」

誰だってこんな状況を見れば俺が有希を泣かしてるように見えるのはわかる。てか実際俺が泣かしたようなもんだけど…

だからってそんな殺気立って俺を睨むのはやめてほしい。

「宮野君?」

今の吉田めっちゃ怖い! 下手なこと言ったら殺されるんじゃないかと思うぐらい。

「ゆ、有希から何とか言ってくれ」

俺がなんと言おうと今の吉田に俺の言葉は通じないと思ったので有希に助けを求めてみた。

「あ、あのね。えっと、和也君がね」

未だに涙目の有希がなんとか吉田を説得しようとしてくれている。

頑張れ有希! 頑張るんだ!

「和也君がね。怖くってね」

怖がらせたのは悪いと思ってるけど今そういうこと言ったら、

「宮野君!!」

吉田がすごい形相で俺に近づいてきた。

「そこに正座!」

「よ、吉田話しを…」

「正座!」

「はい!」

逆らったら殺される…


それから吉田を落ち着かせるのにすごい時間がかかった。

泣き止んだ有希にも力を借りて吉田はようやく落ち着いた。

「すみません…ついカッとなって」

「いや、いいよ。有希を泣かせたのはホントのことだし…」

あの時自分がどういう風になってたのかよく覚えてないけど。

「そういえば宮野君。いつの間にか有希ちゃんのこと名前で呼ぶようになったんですね」

「ああ、まぁ。色々あって…な」

瑞希さんに無理矢理…ん?

今は瑞希さんいないんだし前みたいに長塚でもいいんじゃ?

「そういえばお母さんからこれ」

有希に手紙を渡された。

その手紙を読んでみると、

『いつもあなたを見てますよ』

怖いわ! これはつまりあれか?

『私が見てないからって呼び方戻したら…解ってますよね?』

って言いたいのか!

「どうしたの和也君? そんな顔を真っ青にしてぶるぶる震えて」

「な、なんでもない。大丈夫だ」

瑞希さん…ホントに恐ろしい人だわ。

「ところで二人はちゃんと勉強してます?」

吉田がテスト勉強のことを聞いてきた。

「私はぼちぼち」

有希には悪いがこいつが勉強をしている想像ができない。

「和也君はしてる? 勉強」

「俺か? 俺は今日からやる予定」

翔太に勉強を教えるついでに。

「そうだ! 三人で勉強会しない?」

毎度毎度よくそういうことを考え付くな有希は。

「勉強会…面白いかも」

吉田よ…勉強会は楽しむものじゃないと思うんだが。

「和也君もやろうよ!」

「俺はいいよ」

「ええ~なんで?」

俺は翔太の勉強見なきゃいけないし……ん?

「あのさ勉強会もう一人追加していいか?」

「え? 別にいいけど」

「よし! ならやろう。勉強会!」

「おお。なんかわかんないけど和也君がやる気に」

翔太の勉強をこの二人に押し付けよう!

翔太も俺に教わるより有希たちに教わった方が成績上がるだろ…多分。

「じゃあどこでしようか。勉強会」

「場所は俺の家でいいか?」

翔太に俺の家でって言っちゃったしな。

「え! 和也君の家? いいの!」

有希の目が新しい玩具を買ってもらった子供のようにキラキラと輝いている。

…俺なんか間違えた?

「早く放課後にならないかな~」

「有希ちゃんまだ朝だよ」

俺は生まれて初めて学校が終わってほしくないと思った。



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