第九話「俺の勝ちだ!」
俺たちはそこら辺にあったファミレスに入り、今はそれぞれ頼んだメニューを待っている。
「腹減った。早く食べたい」
「まだ頼んだばかりですよ」
吉田の言うとおりだ。
翔太は余程腹が減っているのか「まだかー」だとか「はーやーく」とかさっきからうるさい。
ちなみに俺はドリアを翔太はミートソーススパゲティ、長塚がオムライスで吉田がカルボナーラ後は四人ともドリンクバーを頼んだ。
「とりあえず飲み物持ってこようよ」
長塚の言うとおりだな。
「なら俺がここに残ってるから三人とも行っていいぞ」
「それなら和也君の分は私が持ってきてあげるよ。何がいい?」
ここは長塚に頼んだ方がわざわざ行かなくて済むか。
「じゃあ頼む。飲み物は何でもいいや。長塚に任せる」
「了解!」
しかし結構な時間服見てたな。
てかまだ服しか見てなくね?
俺たちどんだけの時間同じところにいたんだろうな。
「和也。見て見て」
一番最初に戻ってきたのは翔太。
「って何それ?」
翔太の持っていたコップの中はなんだか濁っていた。
「俺特製ミックスジュース」
色々混ぜたのか。
「お前は子供か!」
「そんなこと言うなよ。結構美味いんだぜ。飲むか?」
「いらん」
「和也君。持ってきたよ」
次に戻ってきたのは長塚。
「ああ。ありがt━」
長塚の両手のコップの中も少し濁っていた。
「お前もか」
「美味しいんだよ。私特製ミックスジュース」
こいつら揃いも揃って…
「はい。和也君の分」
「ああ」
長塚に頼んだ俺がバカだった。
でも頼んだものはしょうがないしこの一杯だけは我慢して飲もう。
「お待たせしました」
最後に戻ってきたのは吉田。
「俺が、俺がおかしいのか!?」
吉田のコップの中も濁っていました。
「わたくし特製ミックスジュースです」
「あれ? 吉田さんって一人称私じゃなかったっけ?」
「私だと有希ちゃんと名前が被っちゃうから変えてみました」
どうやら俺は今まで吉田のキャラを勘違いしていたらしい。
てっきり吉田はツッコミタイプだと思ったんだけどな…
「どうしたの和也君? 遠い目なんかしちゃって」
「いやなんでもない。それよりお前たちは何を混ぜたんだよ?」
「よくぞ聞いてくれた! 俺のはここにあったやつ全部を混ぜてみた」
「お前バカだろ」
もうバカの一言では済まないくらいこいつの頭が狂ってる気がしてきた。
「長塚のは?」
「私のはね炭酸系のを全部混ぜてきた。」
「全部って?」
「コーラとメロンソーダにカルピスソーダ。ホントはもっとあれば良かったんだけど炭酸はこれだけしかなくて」
まぁ翔太のよりはましだと思う。…たぶん
「ちなみに俺のと長塚のは同じ奴だよな?」
「うん。そうだよ」
とりあえず頑張って飲もう。
「吉田は?」
「私はコーラにオレンジジュースです」
「吉田のが一番まともそうだな」
「そうですか?」
絶対そうに決まってる。
「とりあえず飲もうぜ」
そう言うと翔太はジュースを飲んで顔を青くした後トイレにダッシュして行った。
「まぁそうなるわな」
「和也君私特製ミックスジュース飲んでみて」
「…わかった」
俺は覚悟を決めて一口。
「…どう?」
「…飲めなくはない」
「良かった~」
飲めなくはない。でもはっきり言って…
「でも普通に飲んだ方がおいしいよね」
「そう思うなら最初からそうしろよ!!」
長塚の言うとおり普通に飲んだ方がいいと思った。
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「昼も食ったことだし次はどこ行く?」
「私はどこでも」
「私もです」
長塚と吉田は特にないらしい。
「和也は?」
「俺も特には…翔太は?」
「………」
誰も意見がないと…
「よし! 帰ろう!」
「ゲーセンに行こう!!」
「「おーっ!!」」
何でこいつらこんなに息があってるんだ?
今日会ったばかりだよな?
「ほら和也行くぞ」
「はいはい」
ん? あの店って…
「和也君どうしたの?」
「いやあの店」
「あそこって雑貨店ですか?」
「あの店は何も売ってないらいしいぞ」
「「へっ?」」
「何言ってんだ? ちゃんと商品あるじゃんか」
「俺も詳しいことは知らん。せっかくだし翔太ちょっと行ってこい」
「え、何で俺?」
「いいから。ほら」
「わかったわかった」
翔太が雑貨店(?)に入って行ったのを見届け、
「じゃあ行くか」
「ええ!? 本多君は?」
「置いていくのはどうかと…」
「冗談だよ。冗談」
しばらく適当な話をしながら翔太が帰ってくるのを待った。
十分後。
翔太はびちょびちょに濡れて帰ってきた。
「…ゲーセン行くか」
「ちょい待った!? 何も聞かないのはどうかと!?」
「はぁ、何があった?」
深いため息をしながら俺は翔太に聞いてやった。
「なんでそんなめんどくさそうなんだよ」
「気にするな。で、何があった?」
「あの店に入った後適当に商品選んで買おうと店員のおばちゃんに声かけたんだ」
「ナンパか? お前が熟女好きだったとは」
「違うわ! 話聞いてりゃわかんだろ!」
「いちいちツッコむな。で?」
「これくださいって言ったら。水かけられた」
………?
「どゆこと?」
「こっちが聞きたい。それでこれは商品じゃないんですか? って聞いたら「見たらわかるだろ!」って言われてお茶かけられた」
「お茶は爽健美茶か?」
「お~いお茶だ」
なん…だと!?
「ねぇ今の会話必要?」
「有希ちゃん今のにはきっと大きな意味があるんだよ」
「それでじゃあ何で雑貨店みたいなことしてるんですかって聞いたら「あんたに私の何がわかるんだよ!」ってオレンジジュースかけられた」
「果汁20%?」
「100%」
そんなバカな!?
「ねぇそんなことどうでもよくない?」
「有希ちゃん私たちは黙って聞いてよ」
「んで最後に凹んで帰ろうとしたらおばちゃんが「悪かったね」ってタオルくれて「良かったらまた来てくださいな」って言われた」
翔太の話を聞いた俺が思ったこと…
「そのおばちゃんは一体何がしたかったの?」
「「「…………」」」
答えは誰にもわからない。
色々あったがとりあえずは目的地のゲーセンに着いたわけだが、
「うるさい」
ゲーセンってうるさいから嫌いだ。
でも暇なときにはよく来る。
「さて何する?」
「それぞれ好きなのやればいいんじゃないか?」
「そうだな」
さて俺は何するかな。
「和也君あれ取って!」
長塚が俺の腕を取りUFOキャッチャーのところまで引っ張ってきた。
「いきなり引っ張るなよ」
「これ取って! これ!」
聞いてないし…
長塚がほしがってるのはネコのぬいぐるみ。
「正直取れるかどうかわからんぞ」
そこまでうまいわけでもないし。
とりあえずチャレンジ。
まず一回目ぬいぐるみの頭を掴み成功かと思いきや失敗。
二回目胴体を掴むもすぐに落ちて失敗。
三回目もう一度頭を掴むが失敗。
……………
…………
………
十回目失敗。
「ふ、ふふふふ」
「か、和也君。もういいよ。お金無くなっちゃうよ」
「こいつ絶対に取ったる!」
ここまできたら取れるまでやってやる。
数分後。
「俺の勝ちだ!」
無事ぬいぐるみをゲットすることはできたが…
「犠牲は大きかった」
何人もの野口とさよならをした。
「ご、ごめんね。私のせいで」
「別にいいよ。それ無くしたりすんなよ」
結構な額使ったんだから。
「うん! 絶対に無くさないよ!」
この笑顔が見れただけでよしとしよう…何て思わないが、くよくよしてもしょうがないしな。
「ところで翔太と吉田は?」
「さぁ?」
二人を探していると、
「ああ! また負けた!」
「ふふ。本多君って弱いね」
「畜生! 悔しい!」
二人は格闘ゲームをしていた。
しかも見た感じ翔太が何度も吉田に負けてるみたいだ。
「よし! 翔太チェンジだ。俺がやる」
「お、やっと来たか。んじゃチェンジな吉田さん相当強いぞ」
「後で私もやりたい」
そんなこんなで結構な時間をゲーセンで過ごした。
「今日は楽しかったね」
「めちゃくちゃ疲れた…」
今は帰宅途中。長塚とは家の方向が一緒なので一緒に帰っている。
翔太と吉田とはもう別れた。
「またこのメンバーで遊びに行くのもいいかもね」
「…そうだな」
「あれ?」
「どうかしたか?」
「いや和也君はてっきり「疲れるからもう嫌だ」とか言うかと思ったから」
確かに普段の俺ならそう言う気がする。
疲れすぎて頭がおかしくなってきたかな?
「まぁたまにはこういうのも悪くないだろ」
「ふふ。そうだね。ならまた四人で遊びに行こっか」
「気が向いたらな」
俺はふと今日は晴れて正解だったかもな。と、そう思った