全部嘘だよ
診断メーカーで出たお題、「あなたはいつも笑うから」で始まり「全部嘘だよ」で終わる物語を10ツイート(1400字)以内で書きました!
あなたはいつも笑うから、面白かったでしょ? って誤魔化して私も笑う。一世一代の告白も、その瞬間に気軽な軽口として笑い飛ばされて終わり。
「──大好きだよ!」
「はははっ、俺も俺も〜愛してるぜ!」
そうやって今日と変わらない明日がまた来て、仲の良い友達として過ごすの。誰よりも近くにいられるなら、それでもいいって思ってた。あなたが笑ってくれるなら、この胸の苦しさなんて全然我慢できると思ってたのに。
「今日からこいつも一緒でいいよな?」
「う……うん、もちろん」
風になびく長い髪の毛があなたの肩に触れている。不意に見つめ合う二人の距離は、まだまだ遠いはずなのに。
その様子をただ見守るしかできない私だけが、違う世界にいるみたいだった。
「今日から俺ら付き合うことになったんだ」
「──そうなんだ。良かったじゃん、幸せにね!」
私がぱしんと叩いた彼の肩に、彼女の腕がそっと回される。寄り添う二人の、照れくさそうな笑顔。
私、今ちゃんと笑えてるかな? 誰よりも仲の良い友人として。祝福するよ、だってあなたが笑ってるから。
転勤だったり、転職だったり。ひとりまたひとりと減っていく同期たちの中で、最後まで残ったのは私とあなただけだった。
辛い時もたくさんあったけど、それでも踏ん張ってこれたのはあなたがいたからだ。失敗した日は二人で飲みに行って、馬鹿話で笑いあった。あなたが大きなプロジェクトを任された時は、終電がなくなるまで資料まとめを手伝った。お前がいてくれて良かったって、誰より頼りにしてるからっていう言葉は多分、嘘じゃない。
私の温度と違っていただけで。
「あの、先輩たちってすごく仲良いですよね」
「同期で残ってるの、もう俺たちだけだからなぁ」
「そうそう。なんだかんだで付き合いも長いしね」
この子は多分、気付いてる。女の勘ってやつなのかな? だけど、心配しなくていいよ。
「でももう一緒にランチするのも終わりだねぇ」
「は? なんでだよ? 別に俺らが付き合うからって、今更遠慮する仲でもねぇだろ」
「違う違う、そういうんじゃなくて。私にもとうとう異動の話が来たんだよ。ナントっ、春から関西営業所へ行くことになりました!」
なんで言ってくれなかったんだよと怒るあなたと、小さく息を吐きほっとした表情を浮かべる可愛い後輩に笑って見せる。
「向こうで何年か経験積んだら、管理職としてまた戻ってくる予定なの。次に会う時は同期じゃなくて、私があんたの上司かもよ? ふっふっふ、せいぜいこき使ってやるわ!」
「くそっ、負けてらんねぇな。俺もすぐ追いついてやるから待ってろよ!」
あなたならきっとすぐでしょう。不器用で鈍感だけど、そんなところも好きだった。
「結婚式の友人代表挨拶なら任せてね。告白する前グダグダしてたところから話してあげるから」
「ちょ、お前、絶対やめろよ!」
頬を染め、慌てて手を振りながら彼女に釈明をするあなたが幸せそうで良かったと思う。
デスクの荷物をまとめ、振り返らずに会社を後にした。
「さよなら」
連絡先は消去した。転勤? その話は断った。結婚式? 笑えない冗談だ。
大好き、俺も愛してる。
分かってた、そんなの全部嘘だよ。




