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スクエア

作者: 豆月冬河
掲載日:2026/01/05

しいなここみ様主催『冬のホラー企画4』参加作品。

キーワード全部入り。のハズ。

たぶんガチホラー。

 大学の友人達と四人で、雪山へスキー旅行に行った。

 現地では朝から雪がちらついていたが、滑っている途中で吹雪いてきた。


 先日自分探しの旅とかで、バヌアツから帰国した友人の一人・村上が見当たらないので探しているうち、合流は出来たものの、この吹雪だ。全員で迷ってしまった。


 「…不味いな。(くだ)っているはずなのに、平衡感覚もおかしくなってきたかな」


 確実に下っていけば、リフト乗り場に辿り着けるはずなのに、周りは既に白一色。今や下っているのかさえ分からない。

 腰に下げたキーホルダー型方位磁石も、…今向かってるのは、南南東微南? なのか? …クソッ! こんなんで方向が分かるもんか!


 ―――俺がそう憤っていると、ふいに友人の一人・鍋島が声を張り上げた。


 「おい! 見ろ! 小屋だ!」


 吹雪の隙間に、建物の黒い影が見える。

 助かった、と全員でひとまず小屋の中へと飛び込んだ。


   ◇   ◇   ◇


 物置小屋のようだが、中には何もない。こたつでもあれば…、は期待し過ぎだな。水や食料もないが、雪と風はしのげる。

 電気も通っておらず暗かったが、とにかく外と遮られたことで落ち着いた。


 「………吹雪、やまないな」


 漏れ出る外の風の音を聞きながら俺がそう言うと、友人の一人・近藤が、


 「…っ、クソッ、圏外かよ」


 スマホで外と連絡を取ろうとしたが、繋がらないと憤っていた。


 ―――シン、と冷える小屋の中。

 スキーウェアでそこそこ寒さをしのげるが、じっとしているとやはり体温は奪われていく。

 そう思っていると村上がふいに、


 「…なぁ、せっかくこういうところにいるんだ。俺、やってみたかったことあるんだよね」


 全員が「?」と思っていると村上は、


 「『スクエア』ってあるだろ? 四人をそれぞれ四角い部屋の角に配置して、一人ずつ時計と逆回りしながら次の人にタッチする。順番に行けば最後の人の場所には誰もいないはずなのに、五人目が現れて…、ってヤツ」


 「えぇ? 嫌だぞ! ホントに五人目が現れたらどーすんだよ!」


 鍋島が文句を言ったが、村上は笑いながら、


 「ハハッ、普通に考えて現れる訳ないだろ。ホントに出たらみんなで捕まえてやろうぜ」


 すると近藤もニヤリと笑いながら、


 「面白いじゃん。どうせヒマだし、こんなくだらないことでも少しは暇つぶしになるだろ」


 鈴木も良いだろ? と近藤に振られ、まぁじっとしているよりマシだし、と俺も頷いた。

 ジャンケンで一番負けた人が最後と決めた。が…、


 「あー、クソッ、俺が最後かよ…」


 負けてしまった俺は、渋々配置についた。


   ◇   ◇   ◇


 そんなに広くもないはずなのに、隅に行くと周りがほぼ見えない。


 だが気配は分かる。


 ミシッ、ミシッ、と足音が僅かに聞こえ、人と人が接触した気配も何となく分かる。


 一回…、二回…、三回目。

 ポン、と俺の肩を叩く村上。


 「何かいたら大声出せよ」


 小声で囁かれ、ああ、と頷き、俺は次の角へと向かう。

 誰かいたらどうしよう…。いや、誰もいるはず………。




 ……………




 ………良かった。誰もいない。ま、そりゃそっか。


 「おーい、誰もいないぞ。終わりだ終わり。納得したか? 村上…」


 ? あれ? 静かすぎないか?




 ……………




 え? え!? ちょ、ちょっと待て!

 おーい! 村上!? 近藤…、鍋島も! な、何で誰もいないんだ!?

 そ、そもそも…、か、壁は!? 屋根…、な、何もないじゃないか! 真っ暗だ!


 「だ、誰か! 何で誰もいないんだよ! おーい!」


 俺は真っ暗な中を彷徨いながら必死に声を上げたが、全て虚しく掻き消えた。


   ◇   ◇   ◇


 ―――どのくらい時間が経っただろうか。

 俺は一人膝を抱えてうずくまり、考えていた。

 本当なら今頃宿で鍋をつついたり…、そう言えば今日は宿の人達が餅をつくとか言ってたな。…つきたて餅、食いたかったなぁ。


 今は不思議と寒くない。

 何でこんなことに…。このまま俺は、誰に知られることもなく、ここで朽ち果てるのか…。


 …こんなことになるんなら、杏子(きょうこ)ちゃんが村上と付き合い出す前に告っとけばよかった。

 杏子ちゃん…。フラれるかも知れないけど、俺の気持ち、ちゃんと伝えとけばよかったな。


 『あの子、ちょっと変わってる(ひと)が好きなのよ。ある意味そういう病なのよね』


 杏子ちゃんの友達がそんなこと言ってたっけ。

 確かに村上は変わってる。たまに人を上から見るようなところもあるけど、それでもアイツは良いヤツだ。


 …だから俺は、村上と杏子ちゃんが付き合い出しても祝福してたんだ。

 俺がクレーンゲームで取ったぬいぐるみも、杏子ちゃんが好きそうだって村上が言ったから、


 『じゃあお前から杏子ちゃんに渡してやれよ』


 って、アイツに美味しいトコを譲ってやったりも出来たんだ。


 ………ああ、やっぱり杏子ちゃんに伝えたかったな。俺、実は杏子ちゃんのこと好きなんだよ、って。

 無事に帰れたら、そう伝えて…。でも俺は、村上と杏子ちゃんの幸せも願ってるんだよ、って…。………ちゃんと、素直に………。


   ◇   ◇   ◇


 「………い、…おい! しっかりしろ!」


 ふぇっ!? と変な声を出しながら、俺は目を覚ました。近藤と鍋島が俺を心配そうに見下ろしている。


 「あ…、え? 俺…」


 「良かった、気がついたか。何かお前、気ぃ失ってたぞ」


 近藤に言われ、そうなのか? と俺は驚いた。

 二人によると、スクエアを始めてしばらく経っても俺と村上(・・・・)の返事がなくて、部屋の隅で倒れてた俺を心配して起こしてくれたらしい。


 俺は結構な時間、闇の中に閉じ込められていた感覚だったけど、二人の話だとどうやらほんの数分だったみたいだ。

 でも…、おかしいな。


 「………? 村上、は?」


 すると二人は顔を見合わせ、眉根を寄せながら、


 「…それがな、村上のヤツ………」


 「どこにもいないんだ」


 ………え? そんな…!


 「誰も外に出てないはずなんだけどな。…吹雪も収まってきたみたいだし、ひとまず外に出て探してみよう」


 近藤に言われ、俺達は外に出てしばらく村上を探した。

 暗くなってきて一旦宿に戻ったけど、村上は戻っていなかった。


 救助隊まで出動する羽目になったけど、結局村上は、どこにもいなかった―――


   ◇   ◇   ◇


 クソッ! 何で…、何で俺に気づかないんだ!?

 アイツら、俺よりも格下のくせに…!


 鍋島は猪突猛進のバカだし。


 近藤はインテリメガネの偏屈だし。


 鈴木はただのお人好しだし。


 全員、俺以下のくせに…! 普段はそう思わせないように、ちゃんと演技してやってるけど!


 ………そういや、バヌアツの(まじな)い師が何か言ってたな。


 『この先、お前のその驕った心を省みることが出来なければ、お前、とんでもない目に会うよ』


 ふざけるな! 俺は、驕ってなんかいない! 俺は―――


   ◇   ◇   ◇


 ―――あれから数年。おかしな噂を聞いた。

 あの山小屋で、とある学生四人が、あの時の俺達みたいに『スクエア』をしたそうだけど、彼等は一晩中(・・・)(おこな)ったらしい。


 それはつまり、『五人目』がいたことに他ならないのだが、発見されたのは四人。




 ………もしかすると、その『五人目』は村上の魂なのかも知れない。俺は隣で眠る杏子ちゃんを眺めながら、そう思ってしまった。


 村上は未だ、行方不明のままだ。

村上、帰ってくんのかな。…ムリっぽいな(*´_ゝ`)

ガチホラー… でもなかったかも。

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― 新着の感想 ―
出てくると思ったら居なくなる、っていう逆の展開! そして新たな『スクエア』の伝説が……。 「そう言う結末なのか!」ってびっくりというか納得というか(*´Д`*) 面白かったです!!
スクエア、五人目の存在…怖いですね。主人公が経験した空間は何だったのか…現実と異世界の交差点がそこにあったのかも知れない、そう思うとまた怖くなります。 後半もとても印象的でした。読ませていただき、あ…
スクエアを知らなかったので、ラストのところは怖かったです。一晩中スクエアをする4人組も5人目の彼も怖かった(;ω;) 普段ホラーを読まないのでビビりながら明るい部屋で読みました(°▽°)
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