九、鷹丸
阿黒が言うには、家に伝わる刀を使いこなせるように放浪しながら修行をしている最中らしい。二振りの内の片方が彼女の持参したもので、それは柄の先端が湾曲した、ごく古いデザインの直刀だった。代々伝わるというわりには傷もなく真新しく見える。
阿黒が沈黙し、どうやら自己紹介はこれで終わりらしく、鷹丸を見やった。名乗った後、自分は大学を(自主的に)休校している身分で、あまりに退屈なのでこの旅に参加した、異相体を祓ったり戦ったりした経験はない、旅の間どうかよろしくお願いします、と告げる。
短い説明だったが、周囲の人々は鷹丸に良い印象を持ったようだ。これは、彼が持つ溌溂とした、きらめき、のためだった。問題は、鷹丸が他者に対しあまり興味を抱かないことだった。だがその性質上これ以降、旅で出会う相手との矢面に度々立たされることとなるのだった。
その後、商店街を抜けるまでに何人もの名前を聞いたので誰が誰だか分からなくなりそうだったが、鷹丸は名前と特徴をメモしていたので、呼び方を間違える失敗はしなかった。後の六番隊となる人員である。彼らは、だいたい百人を十等分した六番目にいたため、そう呼ばれることになるのだった。




