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五、大竹総長

 大竹は三十歳くらいで、有角の、褐色の肌をした偉丈夫だった。彼はこの場に集まった者たちの誰よりも強そうだった。背が高く体格も良かったし、物々しく具足を纏っていた。


「まずは貴公らに感謝を申し上げる。拙者、日塚の侍、大竹と申す」堂々たる声で大竹は言った。「此度の召集の目的はただ一つ、この退嬰に満ちた都市より、〈さる高貴なるお方〉を、六羽(りくう)の地へお連れすることである。貴公らには、その露払いを担ってもらう」


 鷹丸はチラシにも書かれていた六羽というのが何処か、分からなかった。大竹の中では、その場所がはっきりしているのだろうか。たまにニュースや新聞で、存在しない県の情報が流れることがある。そういった異相県の一つなのかも知れない。そこを目指すというのは、すなわち異相に身を投じることだ。どうなるのか分かったものではない。しかし、集まった人々は何も言わずに黙って聞いていた。


「険しい道になるであろう。魔の者との戦いも、一度や二度ではあるまい。だが、日塚の一員として刀を振るう時、貴公らは既に一人の武士(もののふ)なのである!」


 これに関してはその通りだった。日塚党は維新の前、幕府と呼ばれていた頃から、繰り返し異相体と戦い続けてきた。何世紀にも及ぶその歴史自体が、日塚の武器の一つとして定義づけられるに至った。末席であろうと郎党の一員になった時点で、戦闘能力は最低限強化されるはずだ。


 それに人数もいるし、そこらの路上に出るような異相体なら、どうにかなるだろう。いざとなれば、他の誰かが戦っているうちに逃げればよい。鷹丸はそう思ったが、きっと他の大半も同様に考えているに違いなかった。

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