3/159
三、参加者
一人の少年が、主催者大竹の募集に応じ馳せ参じた。彼の名は久地野鷹丸。艶やかな黒髪を二つ結びにした中性的な容姿は、陽炎館の新人アイドルと言っても通用するかも知れなかった。彼の目には溌溂とした、きらめき、のようなものがあった。
ところが、その実態は極めて社会性に乏しいものだった。彼は実家から大学に通っていたのだが、入学して三か月経たずに通うのをやめた。彼が言う所の、自主休講・自主休学だが、事実上部屋住み・ニートという身分だった。友人付き合いもなく、そもそも入学後のガイダンス等に一切出席していなかった。
ある時新聞の折り込みチラシに混じって、大竹が投入した檄文が彼の家に届いた。【未経験歓迎・六羽県までの遠征】。これを目にした鷹丸は、これは退屈しのぎにちょうどよい、と思った。生活が保障された徒食者が気にするのは、暇潰しの手法だ。散歩・徘徊はその常套手段である。金もかからず、食事もうまくなる。
集合場所は、自宅から電車で四駅の所にある、神骸教会前の駅だった。鷹丸はある休日の朝、着の身着のままで向かった。




