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二十三、祭囃子
その〈狸囃子〉というのは何か、と鷹丸が尋ねた。
「本来はもう少し遅い、真夜中に聞こえてくるものでござるが、どこからともなく祭囃子が聞こえて、源を探そうにも、決してたどり着けず音は遠ざかるばかり。朝になると、見知らぬ場所にいる、という、まあ狐狸妖怪のいたずらですな。しかし、場合によっては、これを真似たもっと厄介な怪異の――そう、擬態ということもあり得ますな」
阿黒が、もっとも怪異や呪詛に敏感であろう四郎に、何か感じるか、と尋ねる。今の時点では、強力な異相体や、それが擬態している気配はない、と彼は答えた。
「いざとなれば、また我が打ち倒すまで。様子を見に行こうではないか」岩手が力強く言った。鹿之助は、危ないときは八兵衛殿がどうにかしてくれないかな、と空を見上げる。もちろん巨人の武者は、相変わらずそこにいる。
阿黒が、本当に危険な異相体なら〈八海〉の警備部隊が駆け付けるだろうし、様子を見に行く、と言った。もし調査の結果、必要なら自分たちで破壊する、いけそうなら予定通り、鷹丸君と鹿之助さんに任せる、と。




