二十、銭袋
上空を見上げると、相変わらず岸木八兵衛が真上に浮かんでいる。どうやらこの百鬼隊の真ん中からやや後ろの部分に付いてきているようだ。彼もれっきとした六番隊員の一人なのだ。
「やはり歩くのは良いですなぁ。初夏の空気とか、街の騒めきなどを直に感じまする。世界と繋がっている感覚を享受すると、神々への感謝が自ずと湧き上がって来ますなぁ」
いつの間にか間近にいた霊泉が言った。鷹丸は気になっていた、彼の背負う袋について尋ねてみた。
「ああ、これは我が武装にござる。こうして筒状の袋に詰めれば、小銭も立派な武器になるというわけですな、というか、この程度にしか役に立たぬのですよ。これはですな――」と、声を潜めて、「いわゆる贋金にござる、いや、法律上、持っているだけでは罪にあらず。拙僧は狐狸妖怪の端くれでして、虚空より小銭を取り出す妖術を嗜んでおりまして。我が身より少し離れれば消え失せる、弱い術にござる、詐欺などには使っておりませぬ、太陽神に誓って。して、このように纏めて、護身の武器とするしかない、つまらぬ金礫にござる」
と、また忍び笑いをする霊泉、やはりどうにも胡散臭い雰囲気が漂っている。




