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二、隊士募集
〈百鬼隊〉という名の集団は、維新の前後から歴史上何度か結成されてきたが、この話の主題となる部隊もそれらと同じく、日塚党の傘下だった。
日塚党の前身は、二百年前の維新で旧神解体を主導した〈幕府〉であり、その功績によって現在も参加者は帯刀権を有している。〈八海〉の一角として武神を崇拝し、警備・軍事を司るこの組織の一員に、大竹なる侍がいた。彼の事実上の私兵であるがため、この泰輪十六年の百鬼隊もまた、日塚郎党的な性質を帯びていた。
大竹がどのようにして百鬼隊の結成に至ったのか、その経緯は謎に包まれている。ある時彼は、突発的に募集のための行動を起こした。
街頭に立ち演説を行う、ポスティングやネットでの書き込みなどで情報を拡散する、といった作業を続け、結果百人ほどの隊士を集めることに成功した。彼の目的は〈さる高貴なるお方〉を東北の〈六羽県〉へ脱出させること。その露払いのために集合したのは、剛の者たちだったか。あらゆる困難を斬り伏せる、強者が集ったのだろうか。
否、それは、退屈を持て余した無職・暇人・不審者らであった。




