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百十、砂嵐派

『前から疑問だったんですが、木堂隊長は』四郎が質問する。『動画編集はどうやってるんですか? 夜に宿で、パソコンとか使ってやってるわけですか』


「編集なんてしてないよ! ぼくは生配信専門だからね!」


「だが、ここは異界内だし、閃波(せんぱ)妨害がひどいのではないか? 音声も映像も乱れ、見られたものではないだろう?」


 これに対し木堂は不敵に笑い、お得意の解説を開始した。


「情報が古いよ、岩手さん! 最近、閃波保護用の機材とか呪符が色々新登場してね、これを使えば、かろうじて聞き取れるくらいにまで軽減できるんだよ。そうだ、この解説を配信しよう」


 と言って、カメラを手に配信を始め、何か良く分からない挨拶か呪文らしいのを唱え、三十名のファンに挨拶してから解説が始まった。


「さあ、六番隊の皆さん、これが最新機材、〈歪震最適化装置ヨロギルム=ゴヴァルメ〉だ!」


 木堂はリュックから、金属製の偶像のようなものを出した。十番隊の五頭の顔面のように、大量の札で覆われ、呪具のようにも見える。カメラから伸びたケーブルが偶像に伸び、現在撮影中の映像をリアルタイムで加工しているらしい。


「これまで、異界内から配信したいってニーズはあったにもかかわらず、生放送はまず不可能で、録画して編集したのちにアップする、ってのが一般的だったんだ。中には〈砂嵐派〉っていって、めちゃくちゃに動画も音声も乱れててもおかまいなしに、リアルタイムで流すって嗜好の人くらいしか生放送はできなかったんだよね。


 だけどこの、公社と陽炎館合同で作られた最新メカは! 異界に閃波を通すための穴を開けることを可能にした。そのためにわざわざ専門の亜神を作って、その名前を製品名にすることで、呪術的防備さえ発揮させているのさ」


 その夜、宿のパソコンでこの解説動画を視聴してみた所、ノイズがひどくて言っていることは半分くらいしか聞き取れなかったし、木堂の顔も舘江隊長が調子の悪いときのように歪んでいた。鷹丸からすると、彼もまた〈砂嵐派〉にカテゴライズされる配信者だった。

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