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異世界グルメ査定人の帰り道

作者: 山田

「……腹が、減った」


石畳の道、行き交う獣人の尻尾、空に浮かぶ二つの月。

見慣れない風景の真ん中で、俺、佐倉湊さくら みなとは腹の虫を鳴らしていた。数時間前まで日本のオフィスで残業していたはずが、足元に広がった光の魔法陣に飲み込まれ、気づけばこのファンタジー全開な異世界にいた。いわゆる召喚ミスというやつだろうか。勇者でも聖女でもない、ただのサラリーマンに何ができるというのか。


「帰りてぇ……」


途方に暮れて街を彷徨ううち、鼻腔をくすぐる香ばしい匂いに足を止めた。路地裏にひっそりと佇む、一枚板の古びた看板。『鉄鍋亭』と彫られている。懐と相談するが、幸いにもポケットには数枚の硬貨が。こちらの世界の通貨かは不明だが、今は空腹を満たすのが最優先だ。


ギィ、と重い木の扉を開けると、客は誰もおらず、ガタイのいい髭面のオヤジさんがカウンターの向こうで暇そうに鍋を磨いていた。元騎士か何かだろうか、腕の太さが尋常じゃない。


「い、いらっしゃい」


珍しい客に驚いたのか、店主は少しどもりながらも席を勧めてくれた。メニューは壁に掛かった木札のみ。『本日の煮込み』と『硬いパン』。選択肢は実質一つだ。


「煮込みとパンを一つ」

「あいよ」


しばらくして運ばれてきたのは、茶色い液体に肉と野菜が沈んだ、素朴な一皿。見た目はともかく、匂いは悪くない。スプーンで一口すすると、肉の旨味がじわりと広がる。だが――。


(うーん、悪くはないけど……惜しいな)


日本の美食に慣れた舌には、どうしても物足りなさを感じてしまう。味が全体的にぼやけているのだ。コクが足りないというか、輪郭がはっきりしない。


「……もう少し、塩気と……何かハーブの香りがあれば、化けるかもしれないな」


無意識に呟きながら、俺はポケットから小さなメモ帳とペンを取り出した。これはサラリーマンとしての癖だった。外食した店の味、改善点、コストパフォーマンスなどをメモし、自分だけのグルメデータベースを作るのが趣味なのだ。


【鉄鍋亭:本日の煮込み】

・味は悪くないが、全体的にパンチが弱い。

・塩をひとつまみ足し、ローズマリーのような香草を加えれば、肉の臭みが消え、味に深みが出るはず。

・パンは……まあ、硬い。スープに浸せばいける。


そんなことをサラサラと書きつけていると、カウンターの向こうから店主の鋭い視線を感じた。しまった、客の前で店の評価をするなんて失礼だったか。慌ててメモ帳を隠そうとした、その時。


「お客様……いえ、もしや……あなたは!」


店主が血相を変えてカウンターから飛び出してきた。その巨体が俺の目の前でひれ伏す。


「お、お待ちしておりました!『覆面査定人』様!」

「は? ふくめん……さていじん?」


なんだそれは。プロレスラーか何かの親戚か?


「この街の飲食店の間に伝わる伝説の存在! あなた様が残した『神の記述レビュー』に触れた料理は、至高の一皿へと昇華されると……! まさか、こんな寂れた店にまでお越しいただけるとは!」


どうやら俺は、とんでもない勘違いをされているらしい。このオヤジ、俺がメモ帳に書いたただの感想を、何かすごい魔法か何かだと思っているようだ。


「いや、あの、俺はただの……」

「お代は結構です! どうか、その『神の記述』を……!」


否定する間もなく、店主は俺がテーブルに置いたメモの切れ端を、まるで聖遺物のように両手で恭しく捧げ持った。そして厨房へ駆け戻ると、俺のメモを食い入るように見つめながら、何かを鍋に振り入れている。


(……まあ、腹も膨れたし、金も取られないならいいか)


面倒なことになったとは思いつつも、空腹が満たされた俺は深く考えるのをやめた。今はとにかく、元の世界へ帰る方法――『門』の情報を探すのが先決だ。俺は店主に礼を言うと、そそくさと店を後にした。


俺が去った後、店主がおそるおそる煮込みの味見をし、その場で泣き崩れるほどの美味さに変貌していたことなど、知る由もなかった。


翌日、街を歩いていると、妙なことに気づいた。昨日まで閑古鳥が鳴いていたはずの路地裏に、長蛇の列ができているのだ。その列の先にあるのは、間違いなく『鉄鍋亭』だった。


「なんだあれ……」


訝しみながら列の最後尾に並んでいた女性に尋ねると、興奮した様子で答えてくれた。

「あなた、知らないの!? 昨日、この店に伝説の『覆面査定人』様が現れて、たった一言のアドバイスでここの煮込みが天上の味になったのよ!」


(やっぱり俺のことか……!)


どうやら、あのメモは本当に魔法のような効果を発揮してしまったらしい。俺の舌は、異世界基準では神の舌だったのか? いや、そんな馬鹿な。


この日から、俺の意図とは裏腹に、「覆面査定人」の伝説がまことしやかに街を駆け巡り始めた。


「門」の情報を探すため、俺は街の様々な飲食店に足を運んだ。パン屋に入れば「パサパサで喉が渇く。牛乳を少し生地に混ぜてみては?」とメモを残し、酒場に行けば「エールがぬるい。冷やした銅のジョッキで出すべき」と書きつけた。


そのすべてが、奇跡を呼んだ。

俺がメモを残したパン屋のパンは、王侯貴族がこぞって買い求めるほどのフワフワ食感になり、酒場のエールは、一口飲めば日々の疲れが吹き飛ぶと評判になった。俺が歩いた道は、いつしか「査定人ストリート」と呼ばれるようになり、街は空前のグルメブームに沸いた。


もちろん、俺自身はそんな騒ぎに気づいていない。ただ、行く先々の店でやたらと歓迎され、無料で最高の食事にありつけるので、「この世界の人は親切だなあ」とのんきに構えていただけだった。


「なあ、聞いたか? 査定人様が次に現れるのは、西通りの焼き菓子屋だって噂だぜ」

「いや、東地区の魚料理屋に違いない!」


街の人々は俺の動向を血眼になって追い、俺が店に入ろうものなら、どこからともなく店主たちが現れて土下座するようになった。


「査定人様! どうか私めの店にも『神の記述』を!」

「いえ、まずは創業百年、我が店に!」


「やめてくれ……俺はただ、静かに飯が食いたいだけなんだ……」


人々の異様な熱気に気圧されながらも、俺は地道に「門」の情報を集め続けた。古文書を扱う図書館、街の歴史に詳しそうな老人、旅の商人。聞き込みを続けるうちに、一つの有力な情報にたどり着いた。


街の中央広場にある、古びた石造りのアーチ。普段は誰も気にも留めないそのモニュメントこそが、異世界と繋がる『帰らずの門』だというのだ。


しかし、門は固く閉ざされている。開くための条件は、長い年月の中で失われてしまったらしい。

がっかりしながらも、俺は調査の合間に立ち寄ったカフェで、チーズケーキを注文した。


(濃厚で美味いけど、少し重いな。レモンの皮でも削ってかければ、爽やかさが出てバランスが取れるだろう)


いつものようにメモ帳に感想を書きつける。すると、俺の向かいの席に座っていた、ローブを目深にかぶった老人が、カッと目を見開いた。


「その『記述』……まさか、あなたは……!」

「え?」

「わ、わしはこの街の歴史を研究しておる者じゃが……古文書にこのような一節があった。『門を叩く者、この地の恵みに満たされし時、道は開かれん』と……!」


老人は興奮して語り続けた。

「『この地の恵みに満たされる』とは、つまり、この世界の食べ物で心身ともに満たされること! 満腹になることじゃ! あなた様のように、食を極め、その真髄に触れることのできる方こそが、門を開く鍵を握っているに違いない!」


つまり、なんだ?

俺がこの世界の飯を腹いっぱい食えば、門は開くということか?


(……なんだ、ゴールはすぐそこじゃないか)


俺はまだ、この世界のグルメをほんの少ししか味わっていない。肉、魚、野菜、果物、酒。まだまだ試していない食材は山ほどある。


帰り道が見えたことで、俺の足取りは軽くなった。

よし、食うぞ。食って食って食いまくって、満腹度100%を達成して、家に帰るんだ!


俺のグルメ探訪は、こうして明確な目的を持つことになった。

それが、隣国との間に燻る戦争の火種に、思わぬ影響を与えることになるとも知らずに。


俺が訪れた街――城塞都市アッシュフォードは、長年、東の軍事国家バルド帝国との緊張関係にあった。国境付近では小競り合いが絶えず、いつ本格的な戦争が始まってもおかしくない状況だった。


バルド帝国は、軍事力は強大だが、国土は痩せており、食文化と呼べるものがほとんどない。兵士たちは携帯食の干し肉と硬いパンをかじるばかり。そんな彼らにとって、突如としてグルメ都市へと変貌を遂げたアッシュフォードは、脅威であり、同時に羨望の的だった。


「アッシュフォードの異常な活性化……その秘密を探れ。背後にいる『覆面査定人』なる人物の正体を突き止め、可能ならば帝国に引き入れよ」


帝国の諜報機関『黒鴉』に所属するエージェント、イーリスは、密命を受けてアッシュフォードに潜入した。銀髪をフードで隠し、鋭い眼光で街の様子を伺う。彼女は帝国最強と謳われる暗殺者であり、毒味の心得もある。どんな毒が仕込まれていようと、見抜く自信があった。


調査の結果、すべての発端が路地裏の小さな食堂『鉄鍋亭』であると突き止めたイーリスは、客を装って店に足を踏み入れた。


「いらっしゃい!」


威勢のいい声で迎えたのは、熊のような大男の店主ゲルハルト。イーリスはカウンターの隅に座り、噂の煮込みを注文した。


運ばれてきたシチューから立ち上る、複雑で豊かな香り。食欲を刺激する匂いに、イーリスはゴクリと喉を鳴らす。

(落ち着け、これは任務だ。まずは毒の有無を……)


銀の匙をスープに浸す。変色はない。次に、一口だけ口に含む。

その瞬間、イーリスの全身に衝撃が走った。


(なっ……!?)


濃厚な肉の旨味、野菜の甘み、それらをまとめ上げる絶妙な塩加減と、鼻腔を抜ける爽やかなハーブの香り。それぞれの素材が完璧な調和を保ち、口の中で至福のハーモニーを奏でる。今まで食べてきた、ただ空腹を満たすための「餌」とは、次元が違う。


「……おい、しい……」


諜報員としての仮面が剥がれ落ち、一人の少女のような素の言葉が漏れた。夢中でシチューをかき込み、パンで皿の底を綺麗に拭う。満たされた胃袋が、凍てついていた心をじんわりと温めていく。


「おかわり、もらえるだろうか」

「おう、いくらでも食ってくれ!」


ゲルハルトは嬉しそうに笑った。

その日以来、イーリスは『鉄鍋亭』の常連になった。査定人の正体を探るという任務も忘れ、毎日開店と同時に店へ駆け込み、閉店までシチューを食べ続ける日々。


「店主、今日の煮込みは一段とコクがあるな」

「へへ、査定人様のアドバイスで、玉ねぎを飴色になるまで炒めるようにしたんでさァ」

「なるほど。この酸味はトマトか? 素晴らしい采配だ」


いつしかイーリスは、店の味について店主と語り合うようになっていた。帝国の仲間からの定時連絡も無視し、すっかりアッシュフォードの食文化に魅了されてしまっていた。


(もう、干し肉と硬いパンの生活には戻れない……)


そんなある日、いつものようにカウンターでシチューを堪能していると、店の扉が開き、一人の青年が入ってきた。特徴のない、ごく普通の黒髪の青年。しかし、店主のゲルハルトが、その青年に向かって深々と頭を下げたのを見て、イーリスは息を呑んだ。


(あの男が……『覆面査定人』……!)


伝説の存在を前に、イーリスは緊張で体を硬くした。どんな屈強な男かと思っていたが、そこにいたのは、どこか気の抜けた、人の良さそうな青年だった。


その青年――湊は、カウンターの席に座ると、慣れた様子で注文した。

「オヤジさん、いつもの」


その一言が、イーリスの運命を決定づけることになる。


「門」を開く条件が「満腹度100%」だと知った俺は、文字通り、アッシュフォードの街を食べ歩いた。

朝はパン屋で焼きたてのパンを頬張り、昼は市場の屋台で豪快な串焼きにかぶりつく。午後はカフェで甘いタルトを味わい、夜は酒場で様々な種類の酒と料理を堪能した。


俺の胃袋は、さながら四次元ポケットのように、次々と異世界の美味いものを吸収していく。そのたびに、体の奥から不思議な力が満ちてくるのを感じた。満腹度ゲージがあるとしたら、今や99%といったところだろうか。


(あと一押し……最後の一皿は、やっぱりあそこだよな)


俺が向かったのは、この世界で最初に訪れた場所、『鉄鍋亭』だった。


店の扉を開けると、そこには見慣れた顔があった。熊のような店主ゲルハルトと、いつもカウンターの隅で黙々とシチューを食べている銀髪の女性客。確か、イーリスさんとか言ったか。


「査定人様! お待ちしておりました!」

「やあ、オヤジさん。イーリスさんも、こんばんは」

「……うむ」


イーリスさんは相変わらず無愛想だが、俺が来ると少し嬉しそうな顔をする。すっかりこの店の常連同士だ。


「さあ、こちらへ! 今日は査定人様のために、最高の食材をご用意しましたぜ!」


ゲルハルトに促され、カウンターに座る。目の前に置かれたのは、今まで見たこともないほど具沢山な、特別なシチューだった。


「これは……?」

「この街で手に入る、最高の食材をすべてぶち込みました。査定人様への、俺からの感謝の気持ちです」


ゴクリと喉が鳴る。これが、俺の帰り道への最後の切符だ。

スプーンを手に取り、ゆっくりと口に運ぶ。


――美味い。


言葉を失うほどの美味さだった。

肉はホロホロと崩れるほど柔らかく、野菜はそれぞれの甘みと食感を残している。スープは、何十種類もの食材の旨味が溶け合い、複雑で、それでいて完璧にまとまった味を生み出していた。


一口、また一口と食べ進めるごとに、満腹度のゲージがぐんぐんと上昇していくのが分かった。99.1%、99.2%……。


「……なあ、店主」


ふと、隣で同じシチューを食べていたイーリスさんが口を開いた。

「このシチュー、我が国の食材……バルド産の岩塩と干し肉を使えば、さらに力強い味になるだろうな」


その言葉に、ゲルハルトは眉をひそめた。

「バルドだと? あんな無粋な連中の国の食材なんざ、使えるかよ」

「無粋とはなんだ。貴様らアッシュフォードの軟弱なパンこそ、我が帝国の兵士の糧にはならん」

「なんだと、てめぇ!」


一触即発の雰囲気になる二人。まあ、この二人はいつもこんな感じだ。食の好みを巡って、しょっちゅう言い争いをしている。


俺は最後のシチューを味わいながら、いつもの癖でメモ帳を取り出した。


【鉄鍋亭:究極の煮込み】

・文句なしに美味い。満点。

・ただ、この濃厚なシチューには、アッシュフォードのフワフワな白パンよりも、バルド帝国で食べられているという、少し酸味のあるライ麦の黒パンの方が合うかもしれない。

・両国の食材を組み合わせれば、きっと誰も食べたことのない、最高の料理が生まれるだろうな。国同士は仲が悪いみたいだけど、食い物に国境はないよな。


最後のパンで皿を綺麗に拭い、最後の一滴まで飲み干した。

その瞬間。


――カキンッ!


頭の中で、何かが満ちる音がした。

【満腹度が100%に達しました。帰還シークエンスを開始します】


「え?」


次の瞬間、俺の体が淡い光に包まれた。体がふわりと浮き上がり、目の前の空間がぐにゃりと歪む。歪みの向こうに、見慣れたオフィス街の風景が見えた。


「うわっ、ちょっ、待っ……!」

「さ、査定人様!?」

「貴様、どこへ行く!?」


ゲルハルトとイーリスさんの驚愕の声を背に、俺の体は光の渦に吸い込まれていく。


(あ、メモ帳……!)


テーブルの上に置き忘れたメモ帳に気づいたが、もう遅い。

視界が真っ白になり、次に目を開けた時、俺は日本のアスファルトの上に立っていた。


こうして、俺の短い異世界グルメツアーは、唐突に終わりを告げたのだった。


エピローグ


湊が去った後、『鉄鍋亭』には静寂が訪れた。

テーブルの上には、一冊のメモ帳がポツンと残されている。ゲルハルトとイーリスは、吸い寄せられるようにそのメモ帳を覗き込んだ。


そこに書かれていたのは、二つの国の食材の融合を提案する、最後のアドバイスだった。


「……アッシュフォードのシチューに、バルドの黒パン……」

「うちの国の干し肉と岩塩を……こいつのシチューに……?」


二人は顔を見合わせた。ついさっきまでいがみ合っていたのが嘘のように、その目には同じ光が宿っていた。料理人としての探求心と、未知なる味への好奇心の光が。


数日後、『鉄鍋亭』の店先に、新しい看板が掲げられた。


『国境シチュー、始めました』


バルド帝国の塩辛い干し肉と、アッシュフォードの滋味深い野菜が同じ鍋で煮込まれ、それを酸味の効いた帝国の黒パンに浸して食べる。その料理は、両国の国民の魂を揺さぶるほどの美味さだった。


噂はあっという間に広まった。

『鉄鍋亭』には、アッシュフォードの住民だけでなく、国境を越えてバルド帝国の兵士や国民までが列をなすようになった。同じテーブルで、同じシチューを分け合い、その美味さに共に涙を流す。


「美味いな」

「ああ、美味い」


そこに、敵も味方もなかった。ただ、美味いものを愛する人間がいるだけだった。

長年続いていた両国の緊張は、一杯のシチューによって、雪解けのように消えていった。戦争の危機は回避され、国境には市場が開かれ、平和な交流が始まったのである。


アッシュフォードの中央広場には、いつしか一人の青年の像が建てられた。片手にスプーン、片手にメモ帳を持ったその像は、「伝説のグルメ査定人」として、末永く人々に愛されたという。


一方、その頃。

日本の牛丼チェーン店で、佐倉湊はいつものように牛丼をかき込んでいた。


「……ん、美味い。美味いけど……なんか物足りないな」


異世界の、あの濃厚なシチューの味が忘れられない。


「この紅ショウガの代わりに、なんかこう、ピリッとするハーブとか乗せたら……」


無意識にメモ帳を取り出してペンを走らせる。

彼の無自覚なグルメ査定は、これからも続いていく。

世界のどこかで、新たな奇跡の料理が生まれるのかもしれない。それは、神のみそ汁、いや、湊のみぞ知る物語である。

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