俺とワン吉
俺とゴールデンレトリバーのワン吉はいつも一緒だ。兄弟と言っても過言では無いだろう。
「ワン!ワン!」
ワン吉が散歩の紐を持ってくる。そうかそうか!そんなに散歩に行きたかったか!
「よーしよし!ワン吉、今から散歩行こうなー」
そのまま外に行こうとすると何故かワン吉がひどく吠える。
「おいおい、どうしたんだよ」
「クゥーン」
悲しげに鳴きながら咥えて持ってきたのは俺のパンツだった。
「あっ!いっけね!危うくまたお巡りさんに連れてかれるとこだったぜ!ありがとうな、ワン吉」
「ワン!」
頭のいいワン吉は昔から俺のことをこうやってサポートしてくれる。もう魂の相棒と言っても過言では無い。
そんなこんなで田んぼの畦道を歩いてるとメチャクチャでっかい牛蛙が出てきた
「クゥーン」
ワン吉はうちに来た頃から都会っ子だからか、何かを狩猟する姿は一度も見た事がなく、カエル以外にも蝉にだって怖がってる。
これは、俺が見本を見せるチャンスなのでは?
「ワン吉、見てろ!これが相棒の勇姿だ!」
ワン吉がわかりやすいように四つん這いになって、カエルに近づく。よく自室で練習していた甲斐あってかスムーズにカエルに近づく事ができた。
そして…飛びつく!
「みろ!とったぞー!!!」
戦利品のカエルを天に掲げていると、心なしかカエルの目が『マジかよコイツ』という目になってる気がする。
ワン吉の方を見ると、体をほぼ後ろを向けて、しらーっとした目を向けていた。誰に?俺に。
「わ、ワン吉、これはお前のために!」
慌ててカエルを逃すも、視線の冷たさは無くならない。
カエルを捕まえるために手放していた散歩の紐をペイッと投げ渡される。それをもつと反対側の方を咥えて歩き出した。
「あれ、これ俺が散歩されてね?」
おーい、ワン吉ー。と呼びかけるも、振り向きもしない。
そのまま家に帰ると今度は服を咥えられて手洗い場に連れてかれた。俺が手を洗うと、はーやれやれ、と言わんばかりにのそのそと居間のソファーの上で昼寝を始めた
「やれやれ、ワン吉ってやつは」
俺のこと好きすぎるだろー!!!!
「明日も散歩しような!」
ワン吉は尻尾を、パタリと振ってくれた。