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エイプリルフール発、アンドロメダ行き

作者: 江藤ぴりか

嘘と本当が交じる二人のドタバタ宇宙旅行が、今、発進する!

カクヨムにも掲載しています。

     エイプリルフール発、アンドロメダ行き


 ミライが急にソファに座り直して切り出した。

「……実はソウタに黙ってたことがあって」

 ソウタはカップを手に持ったまま、目を丸くした。

「なに?急に改まってさ」

 ミライは一瞬目を伏せて、それから顔を上げた。

「ソウタ、私ね……アンドロイド、つまり人間じゃないの」

 ソウタは目を丸くさせる。

「……え?えっええ?!」

 ミライは悪戯っぽく笑う。

「型番『XYZ0021』、とある研究所から脱走したアンドロイドなの」

 なおも信じられないソウタ。

「えっ、でも喋り方も仕草だって人間そのものじゃないか!」

 彼の疑問が言葉を紡いだ。

「……で、なんで今そのことを言おうと?」

 ミライの表情は浮かない。

「……居場所がバレたみたい。私が操作できない領域にGPSが仕込まれていた、しくったわ」

 彼女は涙を浮かべた。

「だから、今日でさよなら。研究者が私を連れ帰りに来る」

 ソウタの顔が真っ青になる。

「そんな……」

 涙を拭き、気丈に振る舞うミライが笑顔で応える。

「今まで楽しかったよ。人間らしいこといっぱいできて」

 上を向き、これ以上涙が流れないようにするミライ。

「料理にも挑戦したけど、あれは私には合わなかったなぁ」

 俯きながら震える声でソウタは拒否した。

「……いやだ」

「え?」

 目を丸くするミライにソウタは言葉を続ける。

「いやだ!僕はミライが好きだ! 今までもこれからもずっとずっとミライと一緒にいる!!」

 その言葉にミライの涙は再び溢れた。

「ソウタ……。ぐすっ、ありがとう、ありがとう…」

 ミライの手を掴み、ソウタは決意を新たにする。

「どこだっていい、どこか遠くに今から……」

 ミライは項垂れ、笑いが漏れる。

「…っくく、ふふ。ありが、とう……」

 その様子にソウタは頭が追いついていない。

「?」

 ミライがケラケラ笑いだした。

「……ごめん、アンドロイドは嘘。今日はエイプリルフール!」

 そうだ、四月一日だとソウタは気付く。

「!!」

 ネタばらしとばかりに胸元の位置で両手を広げ、おどけてみせるミライ。

「でも人間じゃないのはホント」

 情報量の多さに頭が追いつかないソウタ。

「え!? は? えっ?」

 ふわりと笑うミライがソウタを優しく見つめる。

「ねぇ、ずっと一緒なんだよね?」

 ゴクリと喉を鳴らし、ミライの問いにソウタは答える。

「……うん」

 ニッコリ満面の笑みを浮かべ、明るい声でソウタに未来への展望を話すミライ。

「じゃあ、一緒にアンドロメダ星雲に行こ♡ そこで同棲して、ゆくゆくは結婚して……」

 ソウタは考え込み、片手をかざした。

「……ごめん」

「ん? 聞こえないよ?」

 ソウタは低い声で拒否する。

「だから、そんな嘘つく人はちょっと幻滅した」

 ミライは意に介さない。

「もう遅いよ?だって、もう発進してるし」

 大きな地震を二人を襲う。ミライは平然としている。

「発進って……うわぁ! そそ、空飛んでる!?」

 外では「UFOだ!」「世界の終わりだ!」と人々が叫んでいる。

「そーだよ? だから、宇宙で一番幸せになろうね♡」

 ソウタはこれからのミライと紡ぐ未来に絶望した。

この作品は、もともと自分で書いた声劇台本がベースになっています。ミライとソウタの軽快な掛け合いを小説でも活かしたくて、エイプリルフールの嘘から宇宙へのドタバタ展開に仕上げました。

声劇のノリを残しつつ、二人の心情をちょっとだけ掘り下げてみたので、楽しんでもらえたら嬉しいです!


カクヨムでは長編小説も手がけています。そちらも見ていただけると幸いです。

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