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第5話


 思えば、あの時からだった。


 いつも向こう見ずで、後先のことは考えなくて。


 思ったことを口にして、他人の都合なんて顧みなくて。


 僕はそんな彼女の強引さに、いつも巻き込まれていた。


 1人で静かに本を読んでいる時も、バスに乗って、トボトボと通学路を歩いている時も。



 ねえ



 彼女の口癖は、いつもその一言から始まる。


 他愛もない日常の風景の片隅で、何の気無しに呟くそのセリフが、いつからか、心地よく聞こえるようになった。


 モノクロに塗りつぶされた空の色は、いつの間にか青く、——澄み渡っていた。


 最初はいい気はしなかったんだ。


 僕には僕のペースがある。


 ずっと、そう思っていたから。



 「あと何年…かな」


 「何がや?」


 「私が生きられるのが」


 「何言うとんねん」


 「だって先生が言うとったやろ?手術ではあかんかったって」


 「そんなもん、なんかの間違いや」


 「はは。あんたらしくないやん。いつもやったら、現実を見ろとかちっちゃいこと言うくせに」



 神戸市内の病院に、僕たちはいた。


 桜が咲き始めた、4月の上旬だった。


 珍しく彼女が体の不調を訴え、一緒に病院に行ったんだ。


 夜中の2時だった。


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