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夢見心地

作者: CaoN

おもろいぜ!?

自分は世間から見て悪く思われると嫌になるけど、どうでもよくもなる物だろうか?

カウンセリングも受けたけど、全部ベタな格言風台詞だし、自分の存在が分からなくなって、判断を誤った時にはどう思われるのか。それすらどうでも良くなるのが怖いんだ。

俺は多分、自分が嫌いなんだと思う。

だからこんなに辛いんじゃないかって思う

俺の言葉を聞いて、少しだけ沈黙が流れる。……あー駄目だ。またやっちまったよ。

こういう所が本当に治らないんだよなぁ……。何回同じ事を繰り返せば気が済むんだろう。

自己嫌悪に陥っていると、目の前から声が聞こえた。

それは今まで聞いた事の無い程優しい声で、思わず耳を傾けてしまう。

彼女は俺の手を取りながら言った。

それはまるで母親のように暖かくて、包み込むような優しさを感じる言葉だった。

―――大丈夫だよ。どんな貴方だって私は愛してあげるから。

その瞬間、胸の中で何かが崩れ落ちる音がした。………………………………

目が覚めると、そこには見慣れない天井があった。

辺りを見回すと、ここは何処かの一室らしい事が分かる。……えっと確か俺は……そうだ。あの後意識を失ってしまったんだった。

まだ頭がぼやけているのか上手く思考できない。

すると部屋の扉が開かれ、そこから誰かが入ってくる。

そちらを見ると、そこには先程の彼女が居た。

俺が起きた事に気が付くと、安心したように微笑んでくれた。

そしてこちらへ近寄ってくると、優しく抱きしめてくれた。

ああそうか。この人は俺を受け入れてくれるんだっけ。

そんな当たり前の事を思い出し、彼女の背中に手を回す。

そして俺は自分の口から出た言葉を自覚する。

ああ、俺はやっぱりこの人が好きなんだなって思った。……だからさっきの夢はもう忘れようと思う。

それがきっと一番幸せな結末なんだ。

そう思っていた...

筈なのに。……どうしてだろう。心の底から湧き上がる不安感は消えてくれなかった。

―――あれから数日が経過していた。

どうにも記憶が曖昧だが、俺達は無事に元の世界へと戻る事が出来たようだ。

いや、戻ったというより戻されたと言うべきか。まあどちらにせよ、今こうして生きている以上文句を言うつもりはない。

しかし一つだけ困った事がある。それは――

―――現在進行形で、何故か監禁されているという事である。……うん。何を言っているか分からないよね。大丈夫、俺も分からないから。

一応説明すると、まず俺は彼女に連れられ自宅まで来てしまったのだ。

そこで彼女を出迎えたのは父親であり、彼曰く娘の恩人だとかなんとか。

正直何が何だかさっぱりだったが、どうせ夢みたいなもんだろうと適当に流していたらそのまま家に上がらされ、食事を振舞われ、風呂に入れられ、挙句の果てには泊まっていけと言われてしまった。

勿論丁重にお断りしたが、結局押し切られてしまい、現在は客間にて寝転んでいる。……いや待ってくれ。これはおかしいだろ。何で普通に受け入れてるんだ? しかも相手は自分の親父さんだぞ!?……駄目だ。考えるだけで頭痛くなってきたわ……。

とにかく今は現状を受け入れるしかない。そう思い、諦めて目を瞑ろうとした時だった。

不意に襖が開かれる音と共に、彼女が現れる。

……え、ちょっと待って。まさかとは思うけど、このまま一緒に寝るとかそういうオチじゃないよね? そんな俺の考えを他所に、彼女は布団に入り込んでくる。

ちょ、マジですか!これじゃあ色々とヤバイんですけど!!

とか思ってたら普通に寝始めた。

ん?おかしくね?ふつーこの流れだと...あぁ!やめだ!想像したくない!もういいや。明日になったら出て行こう……。

翌朝、目が覚めた俺は隣にいる彼女を見て驚く。

死んでいた。


比喩ではなく、文字通りの意味で心臓が止まっていた。

慌てて脈を確認するが、やはり鼓動はしていない。

俺は混乱しながらも救急車を呼び、どうにか一命を取り留める事が出来た。

しかし、彼女は目覚めず、医者からは原因不明の昏睡状態と診断された。

それから二週間が経過したが、依然として眠り続けている。

その間に様々な検査が行われたが、全て異常無しという結果しか出なかった。

当然、俺は何度も警察に呼ばれたが、彼女が自殺を図ったという事実は無かった。

それどころか、彼女は誰かに襲われた形跡もなく、外傷も無かったらしい。

つまり彼女は自らの意思で睡眠状態に陥った事になるのだが、当然ながらそんな事例は無く、謎は深まるばかりであった。

そんなある日、俺の元に一人の男が訪ねてきた。

彼は警察関係者らしく、詳しい事情を聞きたいと言ってきたので了承した。

そして彼の話によると、どうにも彼女の様子がおかしかったらしい。

というのも、突然泣き出したり、何かに取り憑かれたかのように笑い出すなど、まるで情緒不安定のような状態だったそうだ。

それで気になって話を聞こうとしたらしいが、どうにも上手くいかないらしい。

何でも彼女はずっと同じ事を繰り返し呟いているのだという。

最初は独り言かと思ったらしいが、どうやら違うようで、明らかに自分に話しかけているような感じだったと。

しかし、その内容というのがまた不可解だったらしい。

――私のせい。私が殺した。私のせいであの子は死んだ。許さない。絶対に。

などと意味不明な事を延々と言い続けていたそうだ。

警察は精神安定剤と催眠療法を行ったが、どちらも効果が無かったらしい。

そうして行き詰まっていた所、俺の話を聞いてやって来たようだ。

俺はその話を聞いた後、直ぐに病院へと向かった。……嫌な予感がする。

急いで病室へと向かうが、そこには誰もいなかった。

ベッドの上には彼女が着ていた服だけが残っており、そのポケットには一枚の手紙が入っていた。

俺は手紙を手に取り、そこに書かれていた内容を読んで愕然とした。

それは彼女の遺書だった。

内容は自分が罪を犯した事への懺悔と後悔。そして自分の身勝手さを嘆いていた。

何故なら彼女の本当の願いは俺と幸せになる事ではなかったからだ。

本当は俺と一緒に死にたかったのだと書いてあった。

俺はそれを最後まで読む事が出来なかった。涙が溢れて視界がぼやけてしまう。

俺だってそうしたかった。でも怖くて踏み出せなくて、結局こんな結末になってしまった。

だけど、それでも俺は君を愛していたんだ。

――だから、どうか俺を許してくれ。

あれから数日が経過していた。

今日、彼女は目覚めた。

そして俺の顔を見るなり抱きついてきて、ごめんなさいと何度も謝ってきた。

俺はそれに優しく頭を撫でながら気にする必要はないと答えた。

すると今度はありがとうと微笑んでくれた。

ふと思う。おかしい、、死んでいただろ?!と。

しかし、俺はあえて何も言わなかった。……いや、言えないと言った方が正しいかもしれない。

何故かというと、どうやら俺は彼女を生き返らせる事に成功したようだから。

まあそれも当然と言えば当然か。何せ俺は夢の中で彼女と会っているのだから。

そこで俺は一つの約束をした。それは、これから先も一緒にいて欲しいというもの。

彼女は少し戸惑っていたが、最終的には受け入れてくれた。

こうして、俺達は無事に結ばれ、末永く幸せな日々を過ごす事になった。

だが、俺は知っている。彼女がまだ満足していない事を。

いつか再び訪れるであろう悲劇を。……その時こそ、今度こそ彼女を救う為に戦おう。

それが彼女を愛する者としての責務だと思う。

――さて、次は一体どんな物語を紡ごうか。

ここまで読んで頂き、誠に有難う御座います。これにてこの物語は完結となります。

楽しめ草

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