勇者、懺悔の時
『ま、まさか…アーレス…君は…』
察しの良い勇者が俺を見下ろす。
ああ、もうお終いだ。
俺は仲間達を信用できなかった。
これはその報いだろう。
ようやく俺は理解した。
俺は英雄たる器ではなかったのだ。
俺は勇者に殺されるだろう。
だが本望だ。
それで彼らの心がわずかでも晴れるならば十分だ。
だが勇者は俺の予想をはるかに超えた男だった。
『ぼ、僕のせいだ…』
勇者は泣きながら膝をついた。
『アーレスはこんな事を考える人じゃないんだ。
それを僕ら…僕が変えてしまったんだぁ!』
勇者の叫びが会場に響き渡った。
やめてくれ、お前は全く悪くない。
全ては俺を案じての行動だったじゃないか。
悪いのはお前を信用できなかった俺なんだ。
だが、そんな俺の思いも空しく王女と魔法使いまで泣き出し始めた。
『いいえ悪いのは私です!
彼を後方に置くように言い出したのは私です。
良かれと思ってしたことが彼を変えてしまったのです!』
『いえ、私のせいです。
私が言葉足らずだったばかりに…偉大なる大賢者の名に傷を…』
(あぁ…あぁぁぁぁぁああ…)
勇者パーティを追放された俺は復讐を決行した。
そして激しく後悔した(俺が)
今更後悔してももう遅い(俺が)
『ド、ドウシタ?アーレス?』
『何カトラブルガアッタノカ!?』
『何デモ言ッテクレ!』
『俺達ハ仲間ジャナイカッ!』
モンスター達からも俺を案じる声が湧き上がる。
俺は本当に良い仲間達に恵まれた。
今は逆にそれが辛い。
もはや涙を流し声も出さずに口を動かし何かを訴えるだけの俺にキッコロがゆっくりと近づいた。
『…アーレス、あの垂れ幕にはなんと書いてあるのだ』
アーレスはかがみ、俺に目線を合わせ耳打ちするような声で優しく問いかけた。
俺は静かに語った。
勇者達が俺を裏切ってはいなかったこと。
ここは純粋に俺との再会を喜ぶための場であること。
そして俺は勇者とは戦えない事。
だが魔物達を裏切ることもできない事を。