いざ決戦の時
それから数日後
ついにこの復讐の時がやってきた。
忌々しい招待状を衛兵に見せ、俺はパーティが開催されている城内に入る。
そう、祝勝会と言う名の俺の公開処刑場だ。
覚悟はできている。
数々の暴言が俺に向けられ、俺は会場にいる全ての人間から嘲笑されるのだろう。
旅立つ前はあれほど俺を頼られていたのにな。
俺は会場への扉の前で大きく深呼吸をするとゆっくりと扉を開いた。
『賢者アーレス様のおなぁありぃいーーーー!』
予想に反して俺は音楽団と拍手による盛大な歓迎を受ける。
どうやらアゲてアゲて落とすつもりらしい。
『皆様ご存じの通り賢者アーレス様は勇者様王女様を連れて旅立ちました。
世界を救った偉業は彼の決心から始まったのです』
次に俺の偉業を讃えるスピーチが始まる。
この後に散々コキ降ろすというのに嫌味ったらしいことだ。
『賢者アーレス様の導きで勇者達は腕を磨いた。
またアーレス様は未熟であったパーティを支えるべく必死に奮戦していたと語られております』
そうだな。
そんなこともあった。
あの時の彼らはまだ生まれ持った才能を振り回すだけの未熟者だった。
俺達の潜在能力に気付いた魔王軍は過剰とも言える戦力を俺達に送ってきた。
自慢するわけじゃないが、どうにか生き延びることが出来たのは俺のおかげだろう。
潜在能力でしか判断材料のない魔王軍にとって、数値化できない知識や経験で戦う俺は完全に計算外だったのだ。
『やがて勇者様達の実力が更なる高みへと至ると、勇者様達はアーレス様との別れを決意します』
来たか。
俺は覚悟を決める。
そう、俺は徐々に足手まといへと変貌していく。
『苦楽を共にした仲間との別れ、それは大変辛い別れだったと聞いております。』
白々しい。
俺はあの時に勇者達が放った言葉を忘れんぞ。
『必ずや魔王を討伐しまた会おう。
再会を約束し別れた彼ら。
そしてついに、魔王を打ち倒して故郷に戻りました。
そして今、約束の再会の時です!』
ナレーターの声に合わせ音楽団が演奏を始める。
そして俺とは反対側の扉から勇者達が姿を現す。
勇者達は俺の顔を見るとニヤリと笑みを浮かべこちらへ歩み寄ってきた。
来るなら来い。
平手打ちか?蹴りか?
どんな屈辱にも耐えてやる。
だが最後に笑うのは俺だ。
俺には貴様と別れた後に出来た新たな仲間達との絆があるのだ。
だが勇者は思いもよらぬ行動を取る。